【取材の裏側 現場ノート】首位を走る阪神でMVP級の働きを見せているのが、昨年の現役ドラフトでソフトバンクから加入した左腕・大竹耕太郎投手(27)だ。22日現在でリーグ単独トップの5勝0敗、防御率0・48。次回登板で規定投球回に到達する可能性もあり、さらにその名がとどろくことだろう。
早大から2017年育成ドラフト4位でソフトバンクに入団。18年7月末に支配下登録となった。19年に5勝を挙げるなど通算10勝ながら、過去2シーズンは未勝利。まさに新天地で〝生き返った〟格好だが、本人は「球の質は去年から変わっていない」と技術ではなく、意識面の進化を語ることが多い。
今季の大竹を見ていて気になるシーンがある。イニング開始前に5球与えられる投球練習だ。ラスト1球はあえて完全に脱力したフォームから、力のない球を投じている。最初は「気のせいか…」と思ったが、初回だけでなく2回、3回…降板までの全イニングで同じことを繰り返している。不思議に思って大竹を直撃すると、丁寧に意図を説明してくれた。
「イメージはダーツです。構えたところにポイっと。ゴミ箱にゴミを投げ入れる…的な。自分のフォームどうこうじゃなく『そこに投げる』という意識面の矢印を、自分側ではなく捕手側に方向転換するという意図で。うまくいく、いかないとかじゃなく、外に自分の意識の矢印を100%向けるための1球です」
この確認作業を取り入れた裏には、古巣での教訓があるという。「打たれたらどうしようとか、二軍に落ちたくないとか、気持ちの矢印が自分に向いていた」。阪神と同様にソフトバンクの先発陣はリーグ屈指の層の厚さを誇り、試合中のマウンドでマイナスな考えが頭をかすめることも度々あったためだ。
「自分の意識を外に向けたほうが、投球はうまくいく。ゲームになったらフォームがどうとか、考えた時点でもう負け。相手がどう思うとか、ここに投げるとか、そういう意識で投げないと、うまくいかない。去年あたりから『自分の意識が自分に向いていては、うまくいかない』ということに気がついたんです」
マウンドで戦うべきは自分自身ではなく、あくまで今、目の前に見えるものだけ。不要な思考を断ち切るための球速100キロにも満たないような〝ダーツな一投〟には、大竹が言う内面の進化がぎっしりと詰まっているように思えた。














