【大下剛史・熱血球論】新井監督を迎えた新生カープの戦いぶりを見ていて「変わったな」と思わせられるシーンがあった。16日のヤクルト戦は初回に先発・玉村が崩れて5点を献上。4回に秋山の三塁打とマクブルームの犠飛で1点はかえしたが、5回を終えて1―5と劣勢だった。しかも悪天候により49分にわたって中断。それでも試合が再開されると、スタンドは再び真っ赤に染まった。

「寒いし、負けてるから帰ろうや」。そんな心境になっても不思議ではない中で、3万人超のお客さんは逆転を信じて席を立とうとしなかった。今季は開幕4連敗から始まり、まだ13試合目。それなのにファンは「新井さんなら何かが起きるかもしれない」と期待している。この変化は意図してできるものではない。

佐々岡前監督(右)と談笑する広島・新井監督
佐々岡前監督(右)と談笑する広島・新井監督

 選手も似たような心境なのではないか。新井監督は連敗中だろうと、劣勢だろうと、雨が降っていようと、ベンチの最前列で大きな声を出し、選手の活躍を自分のことのように喜んでいる。選手はそうした姿勢に敏感なもので「信じてついていけば何かが起きる」と感じているはずだ。ここ数年、満足のいく成績を残せていなかった田中が放った4年ぶりの満塁弾は、そんな信頼関係のたまものと言っていい。選手は「見てくれている」という思いがあれば、頑張れるものだ。

 まだシーズンは始まったばかり。先には山も谷もあるだろう。新井監督にはこのまま目先の勝ち負けに一喜一憂することなく、一丸野球で突き進んでもらいたい。

(本紙専属評論家)