4年連続Bクラスと低迷する広島は、新井貴浩新監督(45)を迎えて捲土重来を期す。5年ぶりのV奪回へ期待も高まる中で「そんなに甘いもんじゃない」と声を大にするのが、新指揮官の恩師の一人で本紙専属評論家の大下剛史氏だ。巻き返しのために、まず着手すべきことは――。球団OBでもある〝鬼軍曹〟が2022年最後の熱筆を振るった。

 今季のカープは66勝74敗3分けで借金8の5位に終わった。3位の阪神とは2・5ゲーム差ながら最下位の中日と0・5差。リーグ連覇したヤクルトには14・5ゲーム差と突き放され、はっきり言って大惨敗だった。

 そんなチームを立て直すべく、来季から新井貴浩新監督が指揮を執る。個人的にも駒沢大の後輩であり、プロ1年目の1999年にはヘッドコーチとルーキーという間柄だった。せっかく監督となったからにはいい思いもしてもらいたいし、OBもみんな、心の底から応援している。

 チーム再建への道のりは決して平坦ではない。最後にリーグ制覇した2018年を最後に4年連続Bクラス。直近3年は勝率5割にも届いていない。指揮官が代わったとか、新人や新外国人選手が加わるといった要素で一変するようなチーム状況ではなく、低迷の要因はもっと根が深いものだと見ている。

 新型コロナ禍が落ち着きを見せた今季は主催試合で196万8991人を動員した。リーグ3連覇した18年の223万2100人には及ばないとはいえ、ご時世を考えればありがたいことだ。しかし、いつまでもファンだって我慢してくれるわけではない。フロントも相当な危機感を持っていることだろう。

 いみじくも最近2年はセ、パ両リーグとも、たたき上げの選手を軸にチーム編成をしたヤクルトとオリックスが連覇を果たしている。言うなれば、カープが伝統的にやってきたスタイルだ。では、振り返って本家であるはずのカープは選手を鍛え上げているのか? 答えはNO。「12球団一の練習量を誇る」と言われていたのは、もう過去のことだ。

 今から23年前、体が丈夫で性格が明るいことぐらいしか取りえのなかったドラフト6位の新人をヘッドコーチとして徹底的に鍛え上げた。キャンプでは毎日のように泥だらけになり、時には悔し涙を流していた。その選手は努力で4番の座をつかみ取るまでになり、のちに本塁打王や打点王、リーグMVPに輝き、通算2000安打も達成した。言うまでもなく、それが新井監督だ。

 今のカープは1年トータルでの戦いを考えられるようなレベルにない。先の秋季キャンプでは選手との顔合わせ程度しかできなかった。となれば2月のキャンプでガンガンやらせるしかない。まず大事なのは、本気で生まれ変わるんだという姿勢をチーム内外に示すこと。表面を取り繕ったところで優勝できるわけでもないのだから、選手だけでなく、監督やコーチも泥だらけになる覚悟でやったらいい。

 新井監督の長所の一つには「聞く耳」もある。コーチ陣も気づいたことがあれば積極的に意見すべきだし、みんなで一致団結して現状を打破してもらいたい。カープは、新井監督は、なぜファンから愛され続けてきたのか? その理由を真剣に考え、原点を見つめ直すことから始めれば、おのずと目指すべき方向性は定まるはずだ。(本紙専属評論家)