【赤坂英一 赤ペン!!】

「どうしたんですか? 何かあるんですか?」

 日南の秋季キャンプで広島・新井新監督にあいさつしたら、キョトンとした表情をされた。新井さんの指導ぶりを見るためだと言うと、「ハハハ」と照れくさそうに笑っていたところがこの人らしい。

 その新井監督、今キャンプでは、野間、遠藤、ケムナら、若手たちに自ら積極的に声をかけている。中でも、新任で弟の良太打撃コーチとともに、熱心に直接指導していたのが堂林である。

 かつては甲子園のアイドルとして人気を博し、2009年ドラフト2位で入団したプリンスも、13年目で31歳。毎年のようにレギュラー定着を期待されながら、いまだ「未完の大器」のままだ。

 そんな堂林について、新井監督は以前から「昔の僕にそっくりですよ。若いころの自分と完璧にかぶってます」と、こう評していたことがある。


「ちょっと打てるようになると、もう球団に期待されて、試合で何度も使ってもらって、どれだけ打つようになるかと思ったら、そこからなかなかうまくいかない。結果がついてこない。教えてる首脳陣も見てるファンも、じれったくて、じれったくて仕方ない。堂林本人がものすごく真面目にやってるだけにね」

 なるほど、確かに、1998年に駒大からドラフト6位で入団したころの新井監督にそっくりである。当時の新井選手はいつも泥だらけになって練習しているのに、打撃ではあっさり凡退、守備では凡ゴロや凡フライをエラーしては、首脳陣にため息をつかせていた。

 そんな下積み経験を持つ新井の下に、堂林が弟子入りしたのは15年オフ。以来、新井にもらったバットを使い、投手にヘッドを向けるフォームもまねして、新井と同じスポーツジムにも通い、同じウエートトレにも取り組んでいた。

 堂林はさらに、新井が10年以上続けていた鹿児島・最福寺の護摩行にも挑戦。実に300度にも達する真っ赤な炎の前で、ひたすら不動明王御真言を唱えていた。新井監督は広島復帰を機に護摩行を再開する意向も明かしていたから、また堂林も連れて行かれるかもしれない。

 来季の4番候補には、チーム最多の17本塁打を打ったマクブルームに加え、メジャー通算54本塁打のデビッドソンも入団。どちらも堂林と同じ右の大砲だけに、レギュラー定着は容易ではない。師匠・新井監督の下、31歳の元プリンスは今度こそ“真価”を発揮できるだろうか。