阪神は12日の巨人戦(東京ドーム)に2―1で勝利。貯金を3とし、首位・ヤクルトとのゲーム差を0・5にまで詰めた。

 指揮官の唯一にして最大の任務はチームを勝利に導くこと。そこに安直なロマンや願望が入り込む余地はなかった。岡田彰布監督(65)は「勝ったから良かったもののね」と照れ笑いを浮かべながらも、大きな波紋を呼んだゲーム終盤の采配については「全然悩まなかった」と冷静に振り返った。

 この日、先発マウンドを託されたのは、3年目右腕の村上頌樹投手(24)。ファームでは十分な実績を積み重ねてきたが、阪神の分厚い投手層の競争には阻まれ、一軍では未勝利。この日の出番も先発ローテの柱・伊藤将の戦線離脱を受けてのものだった。

 だが、背番号41は両軍の予想を覆す好投を披露し、7回まで無安打無四死球無失点のパーフェクトピッチを継続。試合が終盤にさしかかるにつれ、大記録達成への期待が球場内に充満したが、岡田監督は8回一死無走者で回ってきた村上の打席で、代打・原口を送る決断をした。

 場内に交代のコールが告げられると、スタンドからは「えええ~!」という落胆の声。スコアは1―0で阪神の僅差リード。指揮官は村上の球威が徐々に落ちかけているとみて「プロ初勝利が完全試合達成」という〝夢物語〟を自らの手で断ち切った。

 だが、8回からマウンドに上がった石井は、先頭打者の岡本に1号ソロを被弾し、1―1の同点に追いつかれる最悪の展開。このままゲームを落とせば大きな批判を浴びかねないところだったが、延長10回一死三塁から近本が決勝の左前適時打で勝ち越しに成功。岩崎―湯浅の継投策も奏功し、最終的には勝利をもぎ取った。

「あと2点くらい(リードが)あったら(村上を)いかせたけどな。3―0とかな。佐々木朗希なら1―0でも投げさせたけどな(笑い)」。試合後の岡田監督はそう語り周囲を笑わせながら「これは村上の勝ち星よ。チームの中では(村上に)勝ち星ついてるよ」と殊勲の右腕を独特の表現で称える。

「石井も次は失敗のないようにしてくれればいい。(最終回を締めた)湯浅も0点に抑えてくれるという信頼もある」とゲームを最後まで壊さなかったブルペン陣をねぎらうことも忘れなかった。

 博打のようにも見えた采配だが、自身の信念を貫き勝利をもぎとれたことに岡田監督は胸を張った。この日手にした白星がシーズン最終盤で、後々大きく効いてくるかもしれない。