【赤坂英一 赤ペン!!】WBCの開幕前、東京・府中市民球場へオーストラリア代表の親善試合を取材に行ったら、旧知のプロ野球OBがスコアをつけていた。聞けば、「侍ジャパン・栗山監督のたっての要望」により、急きょNPB関係者から依頼されたのだという。

 これまでの大会では、侍ジャパンにNPB球団から優秀なスコアラーが派遣されていた。原監督で優勝した2009年第2回大会は、巨人・西山スコアラーのデータ収集と分析能力が大きく貢献していたといわれる。

 しかし、今大会は専任のスコアラーを置かず、他国の強化試合の偵察も行っていない。トラックマンなどのデータを一部コーチが収集、分析して選手に伝達。それを試合でどう生かすかは選手に任されていたという。

 ところが、そうした中で栗山監督だけはオーストラリアを極度に警戒。昨秋の強化試合で2連勝していながら「すごく不気味。豪州はこれからシーズンに入るので来年はまったく違うチームになっているような、そういう怖さが残り過ぎた」とまで発言していた。

 そこで、栗山監督の意を受けたNPB関係者が“隠密臨時スコアラー”を派遣。その働きが役に立ったからか、1次ラウンドで日本はオーストラリアに7―1で快勝している。スター選手への気配りが話題となっている栗山監督、実は情報戦でも手抜かりはなかった。

 そのオーストラリア戦で勝利を決定づけたのは、東京ドームで自分の看板に突き刺した大谷の先制3ラン。これを目の当たりにしたとき、大谷が日本ハムに入団して間もない13~14年ごろ、栗山監督が、大谷の“二刀流調整法”に随分苦労していたことを思い出した。

 当時、日本ハム戦の試合前の囲み取材で、こんな本音を漏らしている。

「翔平が先発したらどのぐらい間隔を空けて野手として起用すればいいのか、いくら考えても正解はわからないよね。過去にやったことのある人がいないんだから、常に手探りなんだ。翔平のことを考えながら、チームも優勝させなきゃなんて、こんな苦労してる監督は俺ひとりだと思うよ」

 時には「二刀流だっていうんなら、こっちがほっといても投げて、打って、活躍してくれよな」とボヤいていたこともあった。WBC今大会の世界一奪回は、そんな栗山監督のまったく前例のない、10年来の苦労が結実した成果と言ってもいいだろう。