【米フロリダ州マイアミ20日(日本時間21日)発】地獄を見た〝村神様〟が最後の最後に決めた。WBC日本代表・侍ジャパンは準決勝・メキシコ戦(ローンデポ・パーク)に6―5の逆転サヨナラ勝ち。村上宗隆内野手(23=ヤクルト)が1点を追う9回に劇打を放ち、ついに世界一に王手をかけた。3三振を含む4打席凡退で迎えた最終打席で見事な汚名返上。3大会ぶりの頂点を目指す侍が、米国が待つ決勝に勢いを持って勝ち進んだ。

 ヘルメットを頭上に放り投げ、雄叫びを上げていた。メキシコの守護神・ガイェゴスの151キロ真っすぐを強振。打球が中堅手の頭を越え、直前に代走出場していた一塁走者の周東(ソフトバンク)が生還すると、感情が爆発した。

「腹をくくっていった」。大谷(エンゼルス)が二塁打で出塁し、吉田(レッドソックス)が四球でつないで回ってきた打席だった。4―5で迎えた9回無死一、二塁。村上は「バントも頭をよぎった」と正直に言った。空振り三振、見逃し三振、空振り三振、三邪飛で迎えた最終打席。弱気の虫が見え始めていたが、直前に「お前に任せた」という監督の伝言を託され、持ち前の負けん気を取り戻して放った意地の一打だった。

 昨季NPBで最強打者を証明した「令和の三冠王」。だが、今大会はなかなかエンジンがかからず、この日も金縛りにあったかのように沈黙した。3点を先制された直後の4回二死一、三塁の好機では甘い球にバットが出ず、結局三振。そこに〝村神様〟の面影はなく、打線にブレーキをかける結果に、チーム内にも重苦しい雰囲気が漂っていた。

 準々決勝から不動の4番を外れ、5番に打順を下げた。だが、栗山監督は復調を信じ続け、信念が揺らぐことはなかった。「世界がビックリするようなバッター。それを僕はこのWBCで証明したいと思ってやってきた。本人にずっと言ってきたんで。『最後はお前で勝つんだ』と」。優勝するためには、欠かせない〝村神様〟の復活劇。サヨナラ直後、ベンチから飛び出したナイン、生還した大谷、周東が一目散に村上の元へ駆け寄りもみくちゃにした。まさにチームが待ち望んでいた瞬間だった。

 悲願まで、あと1勝。相手は指揮官が「われわれはアメリカに、アメリカでやっている選手を倒したいと思ってやってきた」と語る〝ラスボス〟だ。村上について「アメリカの野球ファンがどういうふうに見るか分からないが、僕は本当に何年かしたら、こっちでやっていると信じている。そういうすごい選手であることは間違いない」とも言った栗山監督。日本野球の実力、すごさを伝えられる若き主砲が、遅ればせながら輝きを取り戻した。