3年ぶりのリーグV奪回へ、巨人・原辰徳監督(64)が打ち出した一大構想といえば不動の中堅手・丸佳浩外野手(33)の右翼転向だ。ただ、背番号8を超える存在がすんなり現れるとも限らない。ゴールデン・グラブ賞7度を誇る名手の〝秘めた能力〟には数字などに表れないものもある。
原監督が今季のテーマに掲げた「センターラインの強化」が本格化してきた。実績では群を抜く丸をあえて右翼に回すのは、現役生活を1年でも長く続けてもらいたい指揮官の思いも込められる。特に昨季は守備に不安を抱えるウォーカーとポランコが両翼に就き、丸はバックアップするために右へ左へと奔走。そんな中でもチームで唯一、全試合出場した。
ただ、6月には34歳となる。原監督は「年齢的なものもあるし、相当な負担をかけた。しかし、(丸を)抜くようなセンターが来なかったら、また戻ってもらう可能性もある」との方針を示している。
宮崎での春季キャンプに入り、丸は右翼での練習に着手した。5日までは球拾いで感覚を養い、8日に行われたシートノックでは力強い送球を連発し、指揮官を「やっぱり肩が強いな」とうならせた。
とはいえ「丸以上」となると正中堅手のハードルは相当に高い。これだけ長くレギュラーとして活躍できた背景には、グラウンド外にも向けられた広い視野があってこそだ。例えば、阪神の本拠地・甲子園球場だけで見せる〝儀式〟がある。初回の中堅守備に就く際、丸は熱狂的な虎党の黄色に染まったスタンドに向かって立ち止まり、必ず帽子を取って深々と一礼する。その理由を本人に聞いてみると…。
「バックスクリーン左の中段くらいかな。そこに絶対、スキンヘッドのおっちゃんがいるんですよ。その人は阪神ファンだけど、絶対に僕のことを呼んでくれるんです。僕のファンなのかどうか分からないけど『丸~!』とか『今日、頼むでえ~!』とかいろいろ言ってくれるんです。温かいですよ」
グラウンド内に目を向けるのは当然としても、スタンドの声にも耳を傾けているという。丸にとっては、ただ一人のファンのために礼を尽くしているつもりだが、その行為そのものが〝地の利〟を生んでいるとの見方もある。
チームスタッフは「丸はそのおっちゃんに頭を下げているだけのつもりかもしれないけど、敵の選手がわざわざスタンドに向かって頭を下げてきたら、周りの熱い阪神ファンも集中力を欠かせるようなヤジを飛ばしづらくなるんじゃないかな」。ふとした行動が〝ヤジ対策〟につながっているのではないかというわけだ。今後の中堅争いは新助っ人のブリンソンを筆頭に加熱していきそうだが、果たして――。












