【広瀬真徳 球界こぼれ話】今月上旬に新人選手の入寮を取材した際「時代の移り変わり」を痛感させられた出来事があった。新人の入寮といえば持参した愛用品を取材するのが通例なのだが、その「品」が以前に比べ明らかに変化しているからである。

 例えば自分が駆け出しの記者だった20年ほど前の入寮時。新人が寮の自室に持ち込むものといえばグラブ、バットなどの野球用具や寝具等の生活用品が中心で、娯楽品では漫画やゲームが一般的だった。

 ところがここ数年はスマホが普及したためか、ゲームや大量の漫画本を持ち込む選手は皆無になった。代わりに急増しているのが香水やアロマ、お香などの「癒やしグッズ」。加えて意外に多いのが愛用の「ぬいぐるみ」だ。自らを癒やすアイテムの一つなのか、今年の日本ハムの新人だけでも複数人が自宅から持ち込んだことを明かしていた。
 もちろんぬいぐるみを持ち込むことは悪いことではないし、否定するつもりもない。厳しい競争社会を生きるプロ野球選手は「強靱」と見られがちだが、実際には孤独な日々を送る選手が多い。その意味では自室で心を慰めてくれる相棒の存在は必須。今の若者には枕元や机上にぬいぐるみを置くのはごく自然のことなのだろう。

 ただ、アラフィフ世代にとって“ぬいぐるみ”はやはり「女性のもの」というイメージが強い。われわれの時代は男性がぬいぐるみを枕元に置いているようならバカにされたものだった。それが今やプロ野球選手が「ぬいぐるみと寝ている」と堂々と語る。「時代が変わった」と言わざるを得ない。

 そんな複雑な思いもあり先日、同世代の球団職員にこの話をすると真顔でこう返された。

「確かに昔は男がぬいぐるみを持っていれば笑われた。でも今の子たちにそんな感覚はない。周りの男性でも“ちいかわ”や“すみっコぐらし”のぬいぐるみを好む男性は多い。リュックにつけている選手だっているんだから」

 そして最後にその職員がこう付け加えた。
「ウチの球団の代名詞とも言える『きつねカチューシャ』ならあるけど、よかったらあげようか? 欲しがる選手、結構多いんだよね」

 ぬいぐるみにカチューシャ…。時代は目まぐるしく変貌を遂げている。