【今村猛 鉄仮面の内側(14)】連覇を達成した2017年、僕は故障離脱した守護神・中崎翔太の代役としてクローザーを務めさせていただきました。シーズン最後まで務め切ったわけではないので、あくまで代役です。中崎の復帰後はセットアッパーとして元の役割に戻りましたから。

 ただ、守護神という立場で登板した試合でものすごく印象に残っている試合があるんです。カープファンの間では「七夕の奇跡」として記憶されている試合です。

 17年7月7日のヤクルト戦(神宮)です。5点を追う9回に代打・新井貴浩さんの逆転3ランなどで劇的勝利を収めた試合がありました。

 9回のマウンドにはライアンこと小川泰弘さん。対するカープはバティスタの6号ソロ、菊池涼介さんの6号ソロ、さらに松山竜平さんの適時打などで2点差に迫りました。

 なおも二死一、三塁。ここで「代打・新井」がコールされるわけです。左翼席からものすごい大歓声が上がったのを聞いていました。この場面、僕はブルペンで登板の準備をしていましたが、チームがリードしなければ投げない予定でした。

 結果はバックスクリーンへ飛び込む逆転3ランです。40代での代打本塁打は球団史上初の快挙というのは後で知りましたが、何せものすごく盛り上がったわけです。

 そりゃそうですよね。センターフライならゲームセット。それが奇跡の代打3ランなわけですよ。ただ、人は立場によって見方が変わります。

 この時点でスコアは9―8。1点リードで守護神がマウンドに登場するという場面です。投手戦をみんなでつないできた試合もしびれますが、こういった動きのある展開も嫌なものなんです。

 心の中でこの展開で逆転するんならもうちょっと点が欲しいな…。そんなことを思っていました。代打・新井さんが逆転3ランであの雰囲気ですよ。僕からしたら、まずいぞ、こんな展開で、勘弁してくれというのはありました。

 これで勝たんとおかしくなるやん。本当にプレッシャーはありました。それでも鉄仮面のままマウンドに上がりました。正直、嫌でしたけど淡々と仕事をするだけです。やることは変わらないんだと思って投げました。

 ヤクルトも意気消沈していたのかゼロで試合を締めることができました。試合後はいい試合だったとか、新井さんナイスホームランとか言葉が飛び交っていました。あのシーズンのカープも強かったですね。

 周りのチームメートが歓喜する中で僕は本当にホッとしていました。僕はクローザーとして打たれてしまうと、そう簡単には切り替えられないタイプの投手でした。

 17年は68試合で3勝5敗23セーブ17ホールド、防御率2・38という数字でした。そこまで深く意識をしたわけではないですが、クローザーという仕事で気づかないうちに心を削られていましたね。

 実際、セットアッパーとして投げるのとやることは変わらないんですよ。ただ、簡単に言うと一人しかいないポジション。出番のタイミングに関しては分かりやすくていいんです。でも、何かしらプレッシャーが確実にあったんだなというのは印象として残っています。