苦渋の決断の背景とは――。日本スケート連盟は22日、フィギュアスケートの全日本選手権(大阪・東和薬品ラクタブドーム)に出場予定だったペアのグランプリ(GP)ファイナル覇者〝りくりゅう〟こと三浦璃来(21)、木原龍一(30=ともに木下グループ)組が欠場すると発表した。練習拠点のカナダから搭乗した航空機が大幅に遅延し、預けた荷物を紛失したことが原因。一方で、フィギュアならでは〝特殊事情〟も今回のハプニングに関係しているという。

 まさかの形で〝りくりゅう〟が欠場を余儀なくされた。当初は開会式の前日(20日)に帰国する予定だったが、フライトが遅れて22日午前0時に成田空港へ到着。伊丹空港までたどり着いたのは同7時半ごろだった。さらに、ロストバゲージにも巻き込まれ、木原のスケート靴や2人の衣装などが22日の時点で手元に戻ってくることはなかった。木原は「全日本選手権優勝が今年の2人の目標だった。本当に大切な試合なので、どうしようもないけど、出場できないのはすごい悲しい」と肩を落とした。

 実は、今回の欠場にはフィギュアならではの背景もある。飛行機に搭乗するにあたり、ロストバゲージは決して珍しいことではない。航空会社も貴重品や必需品は機内に持ち込むことを推奨しており、かつてはスケーターもスケート靴を手荷物で持ち込むことができた。

 しかし、2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、規制が強化。ブレード(刃)が付いていることから「危険物扱い」となり、機内への持ち込みは禁止となった。あるフィギュア関係者は「紛失のリスク?〝危険物〟である以上は、どうすることもできない」と実情を明かした。

 もちろん、代わりのスケート靴や衣装を身にまとい、試合に出場することも不可能ではない。ただ、同関係者が「やっぱりぶっつけ本番は危ない」と指摘するように、ペアはリフトやスロージャンプなど、男女シングルに比べて危険が伴う演技も少なくない。実際、7月のアイスショーでは三浦が激しく転倒して左肩を脱臼。約2か月間一緒に滑ることができなかった。それだけに、木原も「もしスケート靴が届いても、4日間氷に乗ってない状態で安全にリフトをすることは不可能かな」と口にしていた。

 今回の大会は世界選手権(来年3月、さいたまスーパーアリーナ)の代表選考会を兼ねており、代表入りには参加が必須条件。ただ、日本連盟はやむを得ない事情がある場合は考慮して代表を選考する可能性があるとしている。三浦は「また次にファンの皆さまの前で滑れる時に向けて、これからも頑張っていきたい」。今回の悔しさを、次の戦いで晴らせるか。