阪神・渡辺雄大投手が25日、兵庫・西宮市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、1150万円増の年俸1600万円でサインした。

 昨オフにソフトバンクから戦力外通告を受け、阪神へ育成選手として入団した苦労人左腕。オープン戦でのアピールが実り3月に支配下登録されると、貴重な左のワンポイントリリーフとして遅咲きの才能を開花。一軍戦で32試合に登板して防御率2・45の好成績をマークし、大幅増俸を勝ち取った。

「昇給分の使い道は?」と定番の質問を受けた渡辺は「妻にいいものを買ってあげたい。1月の末に2人目が生まれる予定なので。そういう意味では、妻に安心して出産してもらえるのかなと。出産を終えた後に、何かプレゼントした」と愛妻への感謝を真っ先に口に。そして、阪神入団直前に味わったつらい過去を赤裸々に告白した。

「阪神に(入団が)決まって引っ越しをしている時も、実は妊娠はしてたんですけど、戦力外になって少し不安をかけてしまったところもあって、流産してしまって…。自分の中では妻に対してすごく申し訳ない気持ちがあった。今季しっかりやりきって、妻には何かできたらなという思いがありました。その後、また妊娠したって話になった時は、やっぱり今度こそちゃんと安心して産んでもらえるような状態にはしないとダメだなと。そういうところでも(今季は)しっかり投げられました。自分が苦しい中でも、僕のために食事など手を抜かずにしっかりサポートしてくれた。本当に妻には感謝してもしきれない気持ちでいっぱいです」(渡辺)

 新天地で出会った指揮官・矢野前監督からは「移籍して環境も変わって、野球人生変えような」と声をかけられたという。

「その言葉で自分自身も『よし!』という気持ちになりました。若いチームの雰囲気というか、シーズンの序盤で負けが重なった中でも、若い選手は元気がありました。そういった中でできたのは、良かったかなと思います」

 新たな環境で手にした幸福は、もう絶対に手放さない。支えてくれた人たちのためにも、来季再び懸命に腕を振り続ける。(金額は推定)