非難の仕方は慎重に――。阪神・岡田彰布新監督(64)が、佐藤輝明内野手(23)を「入団した時が一番良かった」と酷評し、来季のレギュラー起用白紙を示唆した一件は、大きな衝撃をもって受けとめられた。その素質を高く評価した上であえて口にした〝愛のムチ〟であることは間違いない。だが、本紙評論家の伊勢孝夫氏は「無視・称賛・非難」の指導法でも知られる名将・野村克也氏の教えを引き合いに出し「努力と個性を尊重し、時代に即したコーチングを」と提言した。

【新IDアナライザー・伊勢孝夫】三流の選手は「無視」しはい上がるのを待つ。二流の選手は「称賛」し成長を促す。一流の選手は「非難」し、さらに高いステージへたどり着くよう導く。私がヤクルトの打撃コーチ時代に仕えた野村監督を象徴する、あまりにも有名なメソッドだ。だが、ノムさんは選手を非難するにしても「一死三塁で犠飛くらい打ってくれや。ぎょうさん給料もらっているんやから」程度のもの。「グリップの位置」や「スタンスの広さ」など技術的な部分で選手たちを非難することは一切なかった。

 それはなぜか? 選手一人ひとりの打撃スタイルは、それぞれの個人にしか分からない感覚があってこそ成り立つものであり、それらは「しっかりと尊重すべきものだ」との考えがあったからだ。もし、どうしても修正が必要と思うなら、監督、打撃コーチ、選手の3者でしっかりと話し合いの場をつくるところから始める。それだけに今回のように、マスコミを使い一方的に〝非難〟を展開するやり方に私は違和感を覚えた。とはいえ、そこは指導者歴も豊富な岡田監督のこと。見えないところで佐藤輝に対しフォローはしていると思いたい。

 プロ2年目の佐藤輝はチームで唯一の全143試合出場を果たし、打率2割6分4厘、20本塁打、84打点、51四球。打席での確実性は向上し、本塁打数以外は全ての数字が前年を上回っている。「物足りない」とみる向きも多いようだが、最新鋭のテクノロジーでスコアラーに全ての弱点を丸裸にされる現代野球において、これだけの数字を残した佐藤輝は、十分に立派だと私は考えている。彼のここまでの歩み、努力、工夫は正当に評価されてしかるべきだろう。

 頭ごなしに否定し、ボロカスに非難した上で、「何くそ」と選手たちを奮起させる――。そんな指導法は過去の話だ。私は現在も大学などで選手を指導しているが、今の若者たちは繊細で扱いが難しい。頭をなでながら、寄り添いながら、褒めながら成長を促す。そういう時代なのだろう。阪神という何かと難しい球団で、前任の矢野監督はよく頑張ったものだ。

 くだんの発言から一夜明けた13日。佐藤輝は岡田監督の〝助言〟を受け入れる姿勢をみせたと聞く。何はともあれ、今回の一件が〝軟着陸〟してひと安心だ。(本紙評論家)