【取材の裏側 現場ノート】日本代表や横浜M、セルティック(スコットランド)などで活躍したMF中村俊輔(44)が、今季の横浜FCでのプレーを最後に現役を引退した。

 左足から放たれるFKで数々のゴールを決めてきた希代のレフティー。セルティック時代の2006―07年シーズンには、欧州チャンピオンズリーグでマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)相手に決めたFKは伝説となっている。

 そんなプレーぶりとは別に印象に残っていることがある。本紙は2011年の東日本大震災後、「東日本大震災 緊急提言 負けないぞ日本」と題した連載を掲載した中、記者は俊輔に取材する機会を得た。そこで11年3月29日に行われた復興支援を目的としたチャリティーマッチ(日本代表対Jリーグ選抜)にJリーグ選抜の一員として出場を決めるまでの葛藤を聞いた。

「被害に見舞われた方、家族や親族が亡くなられた方、その気持ちはその方にしかわからないから『希望、勇気を与える』とは軽々しく言えない。チャリティーマッチには『出るか』『出ないか』というのもあった。『勇気を与えるプレーを』とか言うけど、本当にそうなのかと思う。被災者の方々は、そんな気持ちにはなれないと思うから」

 それでも「自分がやれることはそれしかない。(選手たちが)全力でやっている姿を見てもらって何かを感じてくれたらいい」との思いから出場を決めた。率直な気持ちを表現した言葉の一つひとつに感銘を覚えたのは忘れない。引退後は指導者の道に進む俊輔なら、選手の気持ちに寄り添う指導ができる――。引退を機に、その思いを強くした。

(サッカー担当・森下久)