ビッグディール必至の争奪戦がついに幕を開ける――。プロ野球は日本シリーズが終わり、31日からFA行使期間(土、日、祝日を除く7日間以内)がスタート。ソフトバンク・千賀滉大投手(29)のメジャー移籍の行方がストーブリーグの注目案件だ。千賀は海外FA権行使に自らの意思で会見を開き、その後トレーニングを兼ねて渡米する予定。すでに敏腕代理人と契約を結んでいるが、移籍先選定については長期戦も視野に入りそうだ。

 日米球界内で「少なく見積もっても4年1億ドル(約147億円)以上」と、大型契約が予想されている〝世界の千賀〟。2017年WBCで日本人で唯一「優秀選手」に選出された右腕は、今季まで7年連続2桁勝利をマークするなど、順調にキャリアを刻んできた。メジャー市場で先発ローテーションの2番手以内に相当する投手が枯渇している事情も相まって、千賀の評価は高騰必至。これまで海を渡った先人たちと比較しても最大規模の契約に及ぶ可能性が高い。

 すでに千賀は、ダルビッシュ有(パドレス)や鈴木誠也(カブス)の代理人を務めるジョエル・ウルフ氏と契約。日本人選手が求めるプライオリティーを熟知した敏腕代理人に交渉を委ね、縁のある球団を探すことになる。

 今夏以降、千賀の登板に合わせてヤンキースやレッドソックスといった名門、さらにはメッツやパドレス、ドジャースといった資金力潤沢な「ワールドシリーズ制覇」を狙う強豪など10球団以上が複数回に渡って視察。各球団GMクラスの大物幹部がこぞって来日するなど、鷹のエースには熱い視線が注がれ続けた。

 千賀は17年12月の契約更改交渉の席で、海外FA権取得前にメジャー移籍が可能なポスティングシステムの利用を球団に要望。同制度を利用してのメジャー挑戦を一貫して認めない球団方針もあり、夢を実現するために6年の月日を要した。育成選手として門戸を広げてもらい、成長させてくれた球団への恩義はかねて強い。同時に熱い声援をくれたファンへの思いもある。千賀はFA行使の正式手続き後に「お世話になった方々やファンの方たちに向けて、しっかり思いを語らせていただきたい」と球団に要望し、会見を開く予定。自らの言葉で改めてメジャー挑戦の意図、球団やファンに感謝の思いを伝えるつもりだ。

 メジャー関係者の間では「千賀のような市場全体に大きな影響力のある日本人先発投手が、ポスティングではなく海外FA権を使って市場に出るケースは過去に例がない。そういう事情もあって、本人を含めて見通しが全くつかない案件。好条件の選択肢が多いだけに比較検討に悩む時間も必然的に多くなる。トレーニングと並行しながら、フラストレーションのたまる日々が続くかもしれない。そこは千賀も覚悟しているはず」という声もある。千賀を〝起点〟とする玉突き移籍など、市場に大きな影響を与える存在だけに、さまざまな駆け引きが想定され、長期戦も視野に入る。

 千賀は動じることなく準備を進めるべく、早ければ来月上旬にもトレーニングを兼ねて渡米する計画だ。「ホークス千賀」としての会見を一つの区切りに、夢に向かって始動する。巨額契約が見込まれる鷹が生んだ「育成の星」。立身出世はどこまでも続く。(福田孝洋)