ヤクルトとオリックスの間で争われている今年の日本シリーズが連日、白熱の試合を展開している。第5戦を終えて2勝2敗1分け。このまま最後の最後までもつれれば1986年以来、36年ぶり2度目となる「第8戦」、もしくは史上初となる「第9戦」の可能性も出てきた。そんな中、前回「第8戦」までもつれた西武と広島とのシリーズを、西武の一塁ベースコーチとして経験した本紙専属評論家の伊原春樹氏が、当時と今年との「酷似点」を指摘した。
――1986年、西武と広島の日本シリーズは西武が4勝3敗1分けで日本一になりました。第8戦まで突入した唯一のシリーズでした
伊原氏 当時の私は一塁ベースコーチを務めていました。それにしても両チームの特徴や試合展開など、今年のオリックスとヤクルトの日本シリーズとよく似てますね。あの年も両チームの投手陣がよく、接戦続きで1点勝負の息の抜けない試合ばかりでした。
――86年は第3戦が3点差だっただけで、その他の試合は1点差や2点差ばかり
伊原氏 今年も点差がついたのは第3戦だけでしょう。86年の第1戦は東尾が先発して2―0で勝っていたのに、9回に小早川にソロを浴びて、山本浩二さんに外のスライダーをライトにパカーンと持って行かれた。そのまま延長で引き分け。第2戦で内山壮が9回に同点3ランを打ったときに思い出しましたよ。
――その第2戦では投手の山崎福がタイムリー
伊原氏 あの年の西武は第5戦で工藤公康がサヨナラタイムリーを打って流れが変わったからね。第6戦に先発する山崎福が、またいい場面で打ったら、あの時の再現のようになるかもしれない。神宮ではDHは使えないけれど、打撃のいい山崎福が打席に立てるのはオリックスにとっては大きい。逆にヤクルトはDHが使える京セラのほうが戦いやすかったのでは。こういう競った展開では一つのミスが命取りになる。サンタナの守備は相手からすると、つけ入るスキばかりですから。
――87年のシリーズで巨人・クロマティのスキをついた〝伝説の走塁〟が思い出される
伊原氏 そこは高津監督も重々承知で、早い段階で守備を固めるでしょう。守備のスキといえば私が気になったのが第5戦で青木が一塁線を破るタイムリー二塁打を放った場面。同点の二死一、二塁でオリックスの外野はワンヒットでの生還を絶対に許さない前進守備を敷いたんですが、一塁手はライン際を開けていた。あれは明らかなミスでした。
――ワンヒットでの得点阻止では一、二塁間を詰めるケースもあるが
伊原氏 いや、あの場面は一、二塁間を抜かれても前進守備の右翼手がホームで刺せるわけですから、一塁手のセオリーはライン際を閉めないといけないんです。解説者は打った青木を褒めるばかりでなく、そういうところも見ないとね。勝負を左右するのはそうしたミスと…。やっぱり一発でしょうか。
――第2戦の内山壮しかり、第5戦の吉田正もそうでした
伊原氏 86年の第8戦は西武は0―2とリードされていたんだけど、6回に秋山が同点2ランで、バック宙ホームイン。やっぱりあれが大きかったね。それからあの時の西武はMVPに輝いた工藤と、渡辺久信が先発だけでなくリリーフでも投げるなど本当に頑張った。イキのいい若い投手が大事な場面をピシャリと抑えるという意味では、公康とナベちゃんが、宇田川や山崎颯とかぶりますね。
――ということはオリックスの逆転日本一か
伊原氏 第6、7、8戦を敵地でというのもあの年の西武と同じ。球場入りの際、当時の広島市民球場の隣にデパートがあったんですけど、私たちが球団のバスで通りかかると、デパートの正面玄関に「日本一おめでとう」と書かれたくす玉が置かれていたんですよ。「絶対にあのくす玉を割らせないようにしよう!」と一致団結したものです。敵地といえどもオリックスには連勝した勢いもある。さすがに「第9戦まで行く」とは予想できませんが、最後の最後まで楽しませてくれそうです。












