確かな実力者が確かな足跡を残して、ユニホームを脱ぐ決断を下した。ソフトバンクの明石健志内野手(36)が23日に今季限りでの現役引退を表明。ペイペイドームで引退会見を行った。2003年ドラフト4巡目で前身のダイエーに入団。ホークス一筋19年、現在のチームでは野手最後のダイエー戦士だった。

 決断理由は「力不足。走攻守で物足りなさを感じた。打撃で言えば、150キロの球をはじき返せなくなってきている」。晩年悩まされた腰痛を言いわけにはしなかった。負けん気の強い男が貫いた〝潔さ〟が、らしかった。

 最も印象に残っているのは、2010年9月14日のゲーム。「千葉マリンのサヨナラエラー。自分を見つめ直す分岐点だった」。考え方、野球に取り組む姿勢を改め、局面で信頼される〝強い選手〟になった。

「僕が一番誇れるのは19年間ホークスで野球をして、ホークスで引退できたこと」。心底レギュラーを目指しながら、内外野をハイレベルにこなすユーティリティープレーヤーとして生きる道を築いた。そのギラギラ感がチームの競争をあおり、真価を認められた。

 国内FA権を取得した17年のオフ、権利を行使せず球団と年俸1億円プラス出来高(推定)の3年契約を締結。「便利屋」の大台突破という明確な地位向上は、後進への影響を含め大きな意義があった。同業者が「他球団ならレギュラー」と口をそろえる実力者。舞台裏を明かせばセ・リーグ球団などからの評価がすこぶる高く、違う運命の選択肢もあった。それでもホークスに骨を埋める覚悟を決め、19年目に達成した1000試合出場は勲章だ。

 ここまで通算647安打、打率2割5分2厘、17本塁打、213打点、93盗塁(23日時点)。数字だけでは語れない「戦力」として認められた野球人生だった。引退セレモニーは、24日のロッテ戦(ペイペイ)後に行われる。明石は同戦に引退特例枠で出場登録される予定だ。チームは優勝争いの真っただ中だが、藤本監督は「代打で使います」と明言。明石なら――。周囲にそう思わせる何かが、この男にはある。