今季のプロ野球のタイトル獲得者らを表彰するNPBアワーズが17日に東京都内で開かれ、セ・リーグの最優秀選手(MVP)は、プロ野球記録となる開幕投手からの13連勝をマークするなど14勝2敗、防御率1・97で3度目の最多勝に輝いた巨人・菅野智之投手(31)が6年ぶり2度目の受賞を果たした。その菅野は来季からのメジャー挑戦も注目されているが「移籍ありき」というわけではなく、急転残留の可能性も残されているという。一体なぜなのか。
MVP右腕の決断を鈍らせる2つの問題とは――。個人タイトルでは自身3度目の最多勝と、投手部門で唯一獲得していなかった最高勝率を獲得した菅野は「これで主要タイトルを全部とれたので…。最多勝もうれしいですけど、最高勝率の方が僕はうれしいです」と笑みを浮かべた。
会見では気になる今後についても質問が及んだが「僕自身も正直どうなるか分かりません。どこへ行ってもこういう賞をいただけるような活躍をしたいと思ってますし、そのためには想像を絶するくらいの覚悟と決意がないといけないと思う」と今もなお、悩める胸の内を明かした。
果たして日本球界ナンバーワン右腕は海を渡るのか。ポスティング申請した8日の会見ではメジャー移籍ありきで報道されることを懸念。巨人残留も立派な選択肢としている。しかし、こうした姿勢にメジャーでも活躍した上原浩治氏がネットを通じ、その姿勢に疑問を呈するなど、混沌としているのが現状だ。
代理人を含め、菅野サイドが慎重な姿勢を崩さない理由は何なのか――。まず挙げられるのは契約面だ。8日に菅野は「代理人の方から『ここが接触してきてるよ』とかそういうことも何も聞いていない」と語っていたが、その翌日リモート会見に応じた、代理人で米大手事務所「ワッサーマン」のジョエル・ウルフ氏は「数多くの球団が興味を示している」と断言。日米メディアから多くの球団名が飛び交っている。
菅野自身、行きたい球団などのこだわりはないだけに、あとは代理人サイドがいかに獲得希望球団から好条件を引き出せるかにかかっているが「そこで、菅野サイドがどうしても引っかかる問題がある」とは球界関係者だ。それは2016年、ドジャースと契約した前田健太投手(32)の契約内容だという。
前田は契約交渉時、メディカルチェックで右ヒジに「イレギュラーな部分」が発覚。これにより交渉は球団に有利な方向へと動いたといわれ、8年総額2500万ドル(約27億4000万円=当時)と、1年で3億4000万円に届かないほどの年俸に抑えられた。そこに出来高が細かく設定され、満額クリアすれば14億円超となるものの、メジャー移籍を熱望する前田の〝足元を見られた〟ような内容だった。
しかも、シーズン終盤になると中継ぎに配置転換。出来高クリア目前での動きに地元メディアからも「出来高をケチっているのでは」との見方が噴出するなど、前田の大車輪の活躍と相まって〝奴隷契約〟とも言われた。
前出関係者も「菅野は2014年に右ヒジ靭帯を部分損傷をしている。菅野サイドとしても交渉時の懸念材料であることは間違いない。しかも前田の〝前例〟がある以上、思うような条件を引き出せない可能性がある」と指摘した。
そして、もう一つ。菅野の「先発投手」としての強い信念だ。メジャーを「夢」と語る一方、コロナ禍で先の見えない不安を口にしたうえで「MLBの来年のシーズンがどういうふうに行われるか、そこだけですね」と語っている。
こうしたコメントに「覚悟が足りないのでは」と指摘する声も上がるが「覚悟うんぬんの問題ではない」と語るのは巨人のチーム関係者だ。
「智之が一番欲しているのは『先発投手として、たくさん投げられる場所』。果たして来年、その環境がメジャーにあるのかという点に尽きる。『自分は先発で何試合投げられるのか』が、今の彼にとって大きな要素なんです」。ちなみに先日、春季キャンプと開幕日の延期、試合数削減を希望する声がMLB球団オーナー側から上がっているとの現地報道があったばかり。こうした事情も少なからず影響を及ぼす可能性がありそうだ。
交渉期限は来年1月8日午前7時だが、菅野が希望する「年内決着」まで、あと2週間。日本を代表する右腕が満を持して海を渡る日は来るのか、それとも――。












