【藤井康雄「勇者の魂」(27)】人間の身体特性は大きく4つに分かれ、それは打撃にも当てはまる。コンディショニングトレーナーの廣戸聡一さんの考えた「4スタンス理論」は僕がソフトバンクで打撃コーチをした時も指導の軸にしました。打者のタイプは4つあって、それを分かったうえでタイプに合った教え方をする。松田宣浩なんかは突っ込んでいってバットを振る独特なフォーム。マッチはそれを周囲からやるな、と言われていたんです。移動が大きくて穴があるんじゃないか、と思われていたんです。
でもマッチはどちらかといえばイチローと同じで、移動して前でさばくタイプなんです。ボールを体の内側に入れず、泳ぎながらでも打てる、という指導から始めました。それで取り組んできたことが今の形になっている。ホークスはもともとみんなレベルが高いけど、みんなにはまっていったと思います。分類できない選手はいないですよ。あとはその選手の能力の問題になります。
2003年から06年、オリックスの二軍打撃コーチとしての僕の指導が合わずにやめていった選手には本当に申し訳なかった。理論がわかっていれば、少なくとも練習方法もそうだし、教えるやり方は増えていたと思う。逆に何も知らないなら、バットを振らせる、スイングスピードを上げるだけの指導の方がよかったでしょう。「こうしなさい」「こうなんだよ」では逆効果ですよ。
僕の言うことを聞かない方が伸びていたかもしれない(笑い)。「コーチの言うことは聞かなきゃ」って真面目に思い込んでいる高卒選手なんかつぶれてしまったかも…。僕が若手のころの阪急時代は「軸足で回れ」の指導が多かったように思います。それを僕はコーチに言われなかったし、言われたとしても聞く耳を持たなかったからよかった。
そういう意味では高卒の若手で「我」を通したのはイチローですよ。振り子打法がダメと周りに言われてもあの打ち方を変えなかった。他の打ち方があるよ、ではなく、それはダメだと全否定されたのに続けたんだから、すごい。もし、聞き入れて違うことをやりだすと訳がわからなくなって、自分の良さが消えてしまっていたでしょう。見た目はいい姿勢じゃなくても、その人に合っているならいいし、それがナチュラル。違っていたらバランスが崩れてしまう。
今は神戸中央リトルシニアと大阪の創価高校で打撃を教えながら理論を研究しています。奥が深い。廣戸さんとは今も親交があり、プロ野球の世界では僕が広めていけたらと思います。もっと突き詰めていきたいですね。
僕は二軍打撃コーチをやめて07年からスカウトに転身しました。入団以来、初めてユニホームを脱ぐことになった。スカウトといっても何からやっていいのかわからなくて大変で…。印象深い選手は大阪桐蔭のあのスラッガーでした。
☆ふじい・やすお 1962年7月7日、広島県福山市出身。泉州高(現近大泉州)から社会人・プリンスホテルを経て、86年のドラフト4位で阪急に入団。長距離砲としてブルーサンダー打線の一角を担った。オリックスでも95、96年の連覇に貢献。勝負強い打撃が持ち味で、通算満塁本塁打(14本)は歴代3位。代打満塁本塁打(4本)は日本記録。2002年に引退後はオリックス二軍打撃コーチ、11年からソフトバンクで一軍打撃コーチを務め、18年にオリックスに一軍打撃コーチとして復帰。今年から総合建設業「共栄組」に籍を置き、JSPORTSの解説、神戸中央リトルシニア、関西創価で指導している。












