中日は2月27日に白井文吾オーナー(92)の退任と大島宇一郎オーナー代行(55)のオーナー就任が内定したことを発表。今月25日に行われる取締役会で正式決定され、白井オーナーは名誉オーナーとなるが、この人事に中日OBや関係者は大騒ぎ。「白井オーナーの退任で、立浪が監督になる目が出てきた」と早くもミスタードラゴンズ・立浪和義氏(50)の次期監督就任を期待する声が出ている。

「(就任から)20年の節目を迎え、最良のタイミングと判断した」とコメントを発表した白井オーナーは、2003年に落合博満氏(66)を監督に招聘。この大胆な起用がリーグ優勝4回、日本一1回の“オレ竜黄金時代”を築き上げることにつながった。

 その一方で球界のみならず地元財界関係者の間でもささやかれていたのが「白井オーナーの目の黒いうちは立浪がドラゴンズの監督になることはないだろう」ということだった。09年に引退した立浪氏は誰もが認めるドラゴンズ生え抜きの大スターにもかかわらず、現役を引退してから4度あった中日の監督交代機に名前が挙がることはなかった。

 これは白井オーナーの強い意向があったからだと言われている。「白井オーナーは立浪さんのことをあまり評価していない。以前、中部財界の大物が間に入って立浪監督就任への道筋をつくろうとしたことがあったが、そのことが逆に白井オーナーを怒らせることにつながったという話もある」と地元関係者の間では噂されていた。

 それだけに白井オーナーの退任が決まったことで、OBの間では「これで立浪がドラゴンズの監督になる可能性は高くなってきた」「次(の監督)は立浪さんでしょう」という観測が一気に浮上。これまでOBや関係者の間から「立浪監督待望論」が出ても、白井オーナーの下では実現する可能性はなかったが、今回の人事でミスタードラゴンズの将来の監督就任に向けて潮目は大きく変わったと見られている。

 あるOBは「立浪が監督になる流れができれば、中日から離れていた人たちも戻ってくるはず」と分析する。韓国プロ野球のサムスン・ライオンズで二軍監督を務めている落合英二氏(50)をはじめ、立浪氏を慕うOBたちが古巣との距離を縮めることになるのではないかと見ている。

 また、こういった流れは現在指揮を執っている与田監督にとってもプラスに働くという見方もある。

 与田監督、立浪氏の両者と親しいある関係者は「2人(与田監督と立浪氏)の関係はとても良好なんです。だから沖縄キャンプでも根尾の指導を立浪が直接行ったりしている。白井オーナーが退任することで与田監督が根尾や石川昂ら若手を一人前に育てるまで指揮を執り、その後を立浪が引き継ぐという流れになるのではないか」と与田監督と立浪氏との協力関係がより強固なものになると予想。3年契約2年目で少なくともあと2年はチームを任される与田監督にとっても、ミスタードラゴンズを中心としたOBのバックアップ体制が固まればいろいろと動きやすくなるのは間違いない。

 いずれにしろ、白井オーナーの退任で名古屋ではミスタードラゴンズに対する注目度はさらに高くなりそうだ。

【中日OBの中でも特別な存在】立浪氏が中日OBの中でも特別な存在であることを印象づけたのが、昨年12月5日に名古屋市内のホテルで行われた「立浪和義氏 野球殿堂入りを祝う会」だ。

 OBや現役選手だけでなく、地元の政財界などから500人を超える関係者が参加し、出席者の間からは「(中日関係者で)これだけの人を集められるのは立浪さんぐらいでしょう」という声が上がったほど。このパーティーの発起人には東海テレビ、CBC、名古屋テレビ、中京テレビ、テレビ愛知と、名古屋の民放全社の社長が名を連ね、地元の放送業界における“立浪ブランド”の力をまざまざと見せつけた。

 また立浪氏は評論家として訪れた中日の沖縄キャンプでも存在感を発揮。2月23日には与田監督からの依頼を受け、2年目の根尾に対して直接指導を行った。室内練習場で約30分間、打席でボールを呼び込んで打ちにいくまでの動きについてアドバイスを送ると、翌日の楽天戦(北谷)で根尾はオープン戦初安打を含む2安打1盗塁2得点と活躍。

 卓越した打撃理論と指導力の高さを証明した。