パイレーツのレジェンドで今オフ、同球団からFAとなっているアンドリュー・マカチェン外野手(39)が球団の本拠地PNCパークに異例の提言を行い、波紋を広げている。舞台はアレゲニー川とロベルト・クレメンテ橋を背にした「MLB屈指の美球場」。その〝伝統の一部〟に、あえてメスを入れるべきだというのだ。

 発端はロイヤルズが、本拠地カウフマン・スタジアムの外野フェンスを内側に移動させると発表したニュースだった。これに反応したマカチェンはX(旧ツイッター)で「PNCパークはメモを取っておけ」と投稿。その狙いは、左中間の深すぎるフェンスだ。

 レジェンドの提言は、数字が裏付けている。昨季のパイレーツは、チーム本塁打数が117本でMLB最少。PNCパーク自体も昨季の本塁打総数が116本となっており、リーグ屈指の「投高打低球場」だった。特に左中間は383フィート(約116・7メートル、最深部は410フィート(約124・9メートル)と広大で、右打者にとっては「夢を奪う空間」とも称されている。

 さらに右翼側を見ても右中間まで375フィート(約114・3メートル)と近いという利点があるが、殿堂入り選手の背番号にちなんで21フィート(約6・4メートル)の高さを誇る通称「ロベルト・クレメンテの壁」が立ちはだかっている。

 右打者のマカチェンは、左中間が大きく膨らんだPNCパークの形状にこれまでも苦言を呈し続けてきた。地元紙「ピッツバーグ・トリビューン・レビュー」のインタビューでも「何年も前から左中間の壁を(もう少し前に)動かしてくれと頼んできた。正直、あそこに壁がある意味が分からない」と率直に語った。実際、本人が昨季PNCパークで放った13本塁打のうち、左中間越えは3分の1以下のわずか4本。経験者だからこその実感だ。

 一方で球団は、左打ちの強打者を補強するなど球場特性を生かす路線を進めてきた。だが近年、デトロイトやボルチモアなど、伝統的球場が次々とサイズ調整に踏み切っているのも事実だ。

 球宴5度の出場歴や13年のシーズンMVPなど輝かしい経歴を誇るマカチェンは26年の去就が未定ながらパイレーツでキャリアを終える意向を示しており、既に水面下で下交渉を進めている球団側との再契約も時間の問題とみられている。ピッツバーグのファンからも絶大な支持を集めているレジェンドからの爆弾提言は、おそらく単なる〝打ち上げ花火〟では終わらないだろう。伝統を守るか、時代に合わせるか――。PNCパークは今、静かな岐路に立たされている。