フィギュアスケートの全日本女王・紀平梨花(19=トヨタ自動車)が22日開幕の全日本選手権(さいたまスーパーアリーナ)を欠場することが濃厚となった。今季初めに負った「右足関節骨軟骨損傷」のケガが完治せず、欠場なら北京五輪出場の夢はついえる。紀平の今大会に懸ける思いと、今後の競技人生に迫った。


 懸念されたケガの具合は想像していた以上に深刻だった。紀平は今季初戦の予定だったグランプリ(GP)シリーズのスケートカナダ(10月)をケガのため欠場。その後も回復が遅れ、NHK杯(11月)も回避することになった。今回の全日本への欠場は現時点で決断しておらず、本人は最後の1%の可能性にかけて出場を模索。22日の公式練習に参加してわずかな望みにかける意思もあるが、状況的にはかなり厳しいようだ。

 それでも軽々に諦められないのは、来年2月の北京五輪への並々ならぬ思いがあるからだ。2018年の平昌五輪は「前年6月30日の時点で15歳以上」という年齢規定に21日足りず、出場できなかった。小学生のころから「2022年」に照準を合わせ、青春のほとんどをスケートにささげてきた。18年12月のGPファイナルでは平昌五輪女王のアリーナ・ザキトワ(ロシア)を破って優勝を果たす衝撃のシニアデビュー。だが、夢舞台が目前に迫る中で競技人生最大の「壁」にぶつかってしまった。

 日本スケート連盟の代表選考基準では、全日本選手権の出場は必須。世界選手権3位以内の実績があれば欠場しても特例で代表入りは可能だが、紀平は世界選手権4位(19年)が最高成績のため適用されない。つまり、今回の「欠場」は五輪断念を意味する。

 しかし、まだ夢には続きがある。北京大会に出ようが出まいが、もともと26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪を目指すことは決めている。「夢に向かって」と題された小学6年生時の文集には「必ず、オリンピックで優勝」と書かれている。その夢を果たすまで、紀平の挑戦は終わらない。