安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者(41)は20代の頃、約3年間、海上自衛隊の任期制自衛官を経験した。20年秋から関西地方の製造業の会社に勤め始めたが、今年5月に体調不良を理由に退職した。会社関係者は「口数は少ないが攻撃的な感じにも見えない。政治的な思想を感じたことはない」と話した。

 父親を早くに亡くした山上容疑者は、幼少期を奈良市内の別の場所にある母方の実家で暮らしていたという。当時を知る近隣住民は「お母さんはおとなしい方で、あまり積極的に近所付き合いしている方ではなかった。山上容疑者は表で遊んだりもしないし、おとなしくてあまり印象に残っていない。宗教的な話も聞いたことはない。何であんなおとなしいお母さんから、そんなふうに育ってしまったのか」と話した。

 近隣住民らによると、祖父が亡くなった後は奈良市内を転々としていたようだが、今回の事件現場となった大和西大寺駅を含め、その範囲はだいたい5キロ圏内に収まる。

 高校時代は奈良県内の公立高校に通い、卒業アルバムには「分からん。」と記していたという。

 現在は奈良市内のマンションに住んでいるが、住民は「同じフロアだけど見たことがない」と口をそろえる。近所の飲食店などに顔を出していた様子もなく、ある飲食店関係者は「飲みに行くような人やったら、こんな事件起こしてへんのちゃう?」と話していた。人付き合いの薄さが目立った。

 トラブルメーカーの側面は見えにくい一方で、〝影の薄さ〟が目立った。昨年末に大阪・北新地のビル放火殺人事件の犯人も、世の中との付き合いの薄さが指摘されたが、人目を忍ぶかのような生活感とは真逆の大胆な行為に、社会は再び衝撃を受けている。