欧州女子CL決勝で熊谷がゴール リヨンが優勝したけど紗希には「おめでとう」なんて言わない その意味は…

2020年09月15日 11時00分

熊谷の欧州制覇は称賛されるべき偉業だが…(ロイター)

【なでしこリーグ歴代最多182点 大野忍 ひとりごと】先日、日本女子サッカー界にうれしいニュースがありました。欧州女子チャンピオンズリーグ(CL)決勝で、なでしこジャパン主将のDF熊谷紗希選手が所属するリヨン(フランス)がボルフスブルク(ドイツ)に勝って、前人未到の5連覇を達成。熊谷選手は前半終了間際にミドルシュートを決め、アジア人選手として初めて決勝で得点するという快挙のおまけ付きでした。

 これって、本当にすごいことなんですよ。だって、もしこれを男子の久保建英選手がレアル・マドリードで達成したら、日本中が大騒ぎですよね。今回、紗希(面倒くさいからいつもの呼び名にします)の活躍も大きく扱ってくれたメディアもありましたが、あくまで一部の盛り上がりで、一過性のもの。これが今の女子サッカーが置かれている立場なんです。それをみんなが認識しないといけません。

 とはいえ、私も紗希の優勝のニュースを聞いた最初の印象は「だから何?」という薄いものでした。リヨンには私も所属したことがあるから、強いというのはよくわかります。あれだけ世界各国からいい選手を集めたら、勝てないほうがおかしい。紗希なんて、あのチームに入ったら下手くそのほうに入るレベル。だから、日本で女子サッカーをやっている選手には「紗希でもできるんだぞ。目指せないレベルじゃないんだぞ」って言いたいですね。

 先ほども言いましたが、紗希は決してうまい選手ではありません。ドイツ女子W杯で優勝した時もレギュラーでやっていたけど、技術だけだったら宮間あやの足元にも及ばないし、DFとしての読みとかは岩清水梓のほうが圧倒的に上。だから、当時もみんなで紗希には「下手くそ」って言ってました。

 でも、紗希はそれでもめげず「下手くそ」を受け入れた上で、先輩たちに食らいついてやっていたんです。女子サッカーにとって大事なのは技術じゃなく、気持ち。紗希は口うるさい私や、澤さんのようなオーラがある選手と一緒でも堂々とやっていた。こんなメンタルの強さがフランスでもやり続けていられる理由なんだと思います。

 だからこそ、私は紗希には不満もあります。それは「発信力」。世界最高峰のクラブにいて、なでしこジャパンのキャプテンも任されている立場なんだから、もっと女子サッカーをSNSなどでアピールしてほしい。世界の女子サッカーの現状とかもどんどん伝えるべきだし、日本人選手の良さを欧州に知らせてほしいんです。

 今回は「優勝おめでとう」なんてありふれた言葉はかけません。むしろ「決勝でゴールまで決めて調子に乗ってんじゃねえぞ。こんなの通過点だから。もっとやることいっぱいあるからな」って。でも、マイペースの紗希にこんな言葉は響くのかなぁ…。