未来の守護神育成を開始 “静の楢崎”が説くGKの本質

2020年04月15日 11時00分

GK楢崎氏が指導者として再始動

【西川結城のアドバンテージ(14)】元ブラジル代表MFレオナルド氏が、鹿島時代の1995年に魅せた華麗なリフティングシュートからのゴール。昔からのファンだけでなく、若い世代にも知られているJリーグを代表する名シーンの一つだろう。

 先日、NHK・BS1で引退したレジェンドたちが集い、Jリーグの過去の名選手や好チームを振り返る番組が放送された。もちろんレオナルド氏のあの場面も紹介されたが、そこで苦笑いの顔がアップになったのが、GK楢崎正剛氏。そう、流麗華美なリフティングに目を奪われてしまいがちだが、あのゴールを奪われたのは横浜F加入1年目のルーキー、楢崎氏だった。当時のチームメートの前園真聖氏や日本代表でともに戦った中沢佑二氏などにイジられながら、懐かしそうな表情を浮かべていた。

 川口能活氏と並ぶ日本歴代屈指の守護神。現在W杯3大会連続出場を果たしているGK川島永嗣も「選手として人間として、ナラさんの背中をいつまでも追いかけている」と今も語ってはばからない。そんな楢崎氏が今年から本格的に指導の現場に立っている。古巣名古屋のアカデミーコーチとして未来の守護神育成のスタートを切った。

 指導者の道を歩むにあたり「自分の考え方や経験を、一度言語化、具体化したい」と引退直後から語っていた。そこで彼とともにGK論を体系的に示すべく、動画での講習会作成に着手してきた。セービング、ポジショニング、キックなどあらゆる技術的項目があるなかで、楢崎氏が最も強調すべきモノとして挙げたのが、「準備」だった。

 派手なセーブが代名詞だった川口氏に比べ、楢崎氏の現役時代の印象は冷静的確なプレーだった。“動の川口”に対し“静の楢崎”。わかりやすく言うと、こんな表現だろう。楢崎氏は「よく見てもらえれば動も静もどちらもGKには不可欠」と語る中、絶対的に優れたGKになるための必要要素として「セーブに至るまでの細かな準備」と断言する。位置取り、足の運び、見る力など我々が普段試合でGKに目が行くセーブシーン、その前段階に存在していた技術論や方法論。そこにこそ、「守護神の本質」が隠されていた。

 これからについて楢崎氏は話す。「世界で渡り合えるGK育成に少しでも役立ちたい」。派手さ知らずの武骨さは現役時代と変わらず、自身のこだわりを信じ指導人生を進む。 (随時掲載)

 西川氏が作成をサポートした動画講習会サービス「WHITE BOARD ACADEMY」の楢﨑正剛オンライン講習会「守護神=準備のチカラ」~GK専門講座~(https://whiteboard-sports.com/)も好評配信中だ。

 ☆にしかわ・ゆうき 1981年生まれ。明治大卒。専門紙「EL GOLAZO」で名古屋を中心に本田圭佑らを取材。雑誌「Number」(文藝春秋)などに寄稿し、主な著書に「日本サッカー 頂点への道」(さくら舎)がある。