ハイブリッドレスラー・船木誠勝(53)が、これまでに遭遇したさまざまな事件の裏側や真相を激白する好評企画も今回が最終回。最後に船木が語るのは、やはり師匠アントニオ猪木氏(78)以外に考えられない。怒られたこと、ほめられたこと、そして謎の行動…。闘病中の猪木氏を激励する意味も込めて、船木は思い出を語った。


【THE FACT~船木が見た事件の裏側(最終回)】もう泣きましたね。試合を終えて控室に戻るなり、猪木さんに「なんだ今の試合は!」ってビンタされたんです。寒い時期の埼玉・深谷大会。畑(浩和=引退)さんとの試合中、体育館のうしろで何度も「コノヤローッ」ってリングに向かって叫んでたのが猪木さんでした。デビューして1年もたってないのに社長に怒られて、もうクビだと思って泣きました。

 その一件の後、次に猪木さんに怒られたのは藤原(喜明)さんと試合前にスパーリングするようになったころです。ある日、猪木さんがリングに来て「お前、藤原とスパーリングやってるからって、いい気になってるんじゃないか。強くなったと思ってんじゃねぇぞ」と言うんです。そして股割をしろと。後ろから乗っかってきて、めちゃくちゃ痛かった。拷問ですよ。

 巡業が終わって、今度は道場での合同練習。リングに上げられ、猪木さんとスパーリングです。胴絞めをくらって動けなくなって、そこで上に乗られてアゴで目を刺してくるんです。これがめちゃくちゃ痛い。「社長、痛いです」と思わず言いました。強くなったと思ってんじゃねぇぞ――ってことなんでしょうね。

 あと、こんなこともありました。レオン・スピンクス(元ボクシング世界ヘビー級王者=故人)戦前の沖縄合宿でした。猪木さん、ランニングはゆっくり走るんですね。すると「追い越したきゃ追い越していいんだぞ」って言うんです。だから猪木さんと当時付き人で併走していた蝶野さんの姿が見えなるくらい走ったんですよ。

 宿舎に帰ると、蝶野(正洋)さんに怒られました。「船ちゃん、言われても追い越しちゃダメだよ」と。完全に若気の至りですよね。そんな自分を見て猪木さんは喜んでいたのかもしれません。

 それと、これは自分しか見た人がいないんで謎なんですが…。地方巡業では猪木さんと藤波(辰爾)さんがタッグをよく組んでいて、宿舎が旅館だと全員で風呂に入るんです。自分は藤波さんの付き人だったんで、猪木さんの付き人の蝶野さんと背中を流すために待ちかまえてるんですよ。

 すると猪木さんが当然ですが裸で寄ってきますよね。そこでなぜかあそこを引っ張って伸ばして自分にアピールしてくるんです(笑い)。笑いながらビュ~ンビュ~ンと伸ばしてアピールしてくるんで、なんて言えばいいのかなと。とりあえず「押忍ッ」って言っときました(笑い)。

 単にふざけてたんでしょうけど、アントニオ猪木ですからね。すごいことやるなって思いましたよ。歴代の付き人である前田(日明)さんも(獣神サンダー)ライガーさんも、そんなの見たことないって言うんです。自分だけなんですね。

 ところが、この連載の担当者さんがやっぱり引っ張っているところを見たって言うじゃないですか! ロサンゼルスのホテルのサウナかなんかで、引っ張ってた記憶があるそうです。担当者さんは元猪木番の記者ですから、風呂とかも一緒に入ったりしたそうですが「ロスだけでなく、ほかでもよく引っ張ってた気がする」って(笑い)。クセなんですかね(笑い)。

 最初ビンタから始まって、アゴで目つぶしされたり、鼻くそをちゃんこに落とされたり、あそこを引っ張ってたり…。自分にしたら猪木さんは「得体の知れない恐怖」でしたよ。正直、近づきたくなかった。でも、だいたい猪木さんの近くにいました。何かと目をかけてくれました。だいぶ体調も戻ってきているそうですが、もっともっと元気になってもらって、またお会いしたいです。


 ☆ふなき・まさかつ 本名は船木優治(まさはる)。1969年3月13日生まれ、青森県弘前市出身。84年、新日本プロレスに入門。翌年に15歳11か月の史上最年少デビュー(当時)を果たした。89年、UWFに移籍。その後、藤原組を経て93年にパンクラスを設立。ヒクソン・グレイシーに敗れ引退したが、2007年に現役復帰。現在はフリーとして活躍。181センチ、90キロ。主なタイトルはキング・オブ・パンクラシスト、3冠ヘビー級王座。得意技はキック、掌底など。