巨人の新助っ人、アダム・ウォーカー外野手(30)が劇的な進化を遂げている。米独立リーグ出身で守備の指導をロクに受けたことがなく、開幕当初はキャッチボールすらまともにできない弱肩ぶりで周囲を驚がくさせたが、亀井善行外野守備兼走塁コーチ(39)による熱心な指導でメキメキと上達。どんな手法を使ったのか。就任1年目の亀井コーチが、その〝極意〟を赤裸々に明かした。


 ――指導者1年目。教える難しさや楽しさは

 亀井コーチ まあ、一軍だとある程度できた人間が来るところなので、難しさというのは今はそんなに感じていないです。一軍が勝つために、データをいろいろ整理して、この選手にあてはめたりとか、そっちのほうが大変かなという感じですかね。

 ――守備ではウォーカーを連日指導。初めて見た時の率直な感想は

 亀井コーチ いやあ…僕も1年目でしょ? いきなりすげえとんでもない試練が来たなという感じでしたよ(笑い)。本当にこれを教えるのか!? と。これを直さないといけないのかと思うと、最初は相当不安でした。

 ――当時に比べれば、送球もできるようになってきた。どこから着手したのか

 亀井コーチ まず(ウォーカーの)練習のやり方を見て、すべて間違っている感じでしたね。そこからですかね。でも、まず投げるほうを優先的に直さないといけないというところだったので。捕ることに関しては、最初はほとんど何も言わなかったです。カットマンまで投げられるようにしてから。ボールを捕ることの順番は後にしましたね。頭がゴチャゴチャになるから。

 ――課題を一つクリアしたら次のステップに進んでいるように見えた

 亀井コーチ 本当にそんな感じですよ。いろいろ僕の引き出しがある中で(一度に)全部言っちゃうとたぶん無理だと思ったから。何項目かあった中で一個ずつやって、また最初に戻ってあげて。できていなかったら、また最初からやってみたり。投げる感覚と足の使い方、そこらへんは順番にやっていったんです。まずは僕は一番足の使い方だったんですけど。体も横振りだったし、縦振りにしてあげるとか。

 ――進むだけでなく戻る意味は

 亀井コーチ 本当は僕も次に行きたいんですよ。だけど、本当に直すんだったら戻ってあげないと。そこが基本になるから。そこをできるまでやらないと、次のステップに行けないなと思っていたので。

 ――その甲斐あって見違えるように変わった

 亀井コーチ〝僕の中では〟ですけど。実際のプロ野球選手の一軍の守備かと言ったら、まだまだじゃないですか。みんなね、彼に対して見る目が優しくなっているんですよ(笑い)。『良くなったな、良くなったな』って言ってくれるんですけど。ある程度の平均的な守備をやらなきゃいけないわけで。僕自身も学びながら。

 ――14日の練習では、ブルペンのマウンドから投げさせた。どんな狙いがあったのか

 亀井コーチ もともとやろうと思っていたんですけど、シーズン中はなかなかできないので。今日はちょっと多めに投げて体を張らせたかった。投げる筋肉を呼び戻したかったんですよね。彼は(投げることが)不安なので、加減しながらしか投げないんですよ。でも、ブルペンに入るとみんな力が入る。それをちょっとうまく利用して力を入れて投げさせて。ブルペンに入って投げると、肩も広背筋も張ってくるんですよね。「この筋肉を使うんだよ」って教えたかった。それを覚えてほしかったんです。

 ――最後のほうは制球もまばらに

 亀井コーチ あれはもう僕の狙い通りなんですよ。疲れてきて体のバランスが崩れちゃうと、投げられなくなるんです。筋肉の持久力がないからコントロールできない。だから体のバランスも大事だし、筋肉もしっかりと。実際、試合になったら力を入れる。あと彼はスライダー回転なので、フォーシーム=縦回転にするには投げるにはどうすればいいかを考えさせて。彼が「こういう感覚だ」と言ったら「その感覚を大事にしてください」と(伝えたい)。僕の感覚より、ウォーカー自身の感覚が大事なので。

 ――まだまだ伸びる余地はありそうか

 亀井コーチ ここから伸びるかどうかは彼の意識の問題だと思います。今はある程度、見られるようになったじゃないですか。今がたぶんこういう(成長が横ばいな)状態なんですよ。これが長くなるとちょっと…。どこかでギアを上げないと。ここからさらに上に行くには、彼の意識が必要になってくるかな。あとは練習でちゃんと意識して、気持ちを入れてやってくれるかどうか。ここからが難しいです。

 ――指導者1年目からなかなかできない経験

 亀井コーチ そうでしょうし、あれ以上の人はこれから出てこないでしょうね(笑い)。一年かけてやらないと。(守備を)何も知らないまま、ここまで来たんですから。(開幕前よりも)劣ることはないです。