猛虎の真価は3秒で分かる!? 阪神は6月最後の一戦となった30日のヤクルト戦(甲子園)を2―2で引き分けた。これでリーグ戦再開後は4勝6敗1分け。一進一退の攻防を続け、最近は2位の巨人に押され気味だが、他球団の見立ては相変わらず〝盤石〟。そのポイントは試合後にあるという。 

 1―1の8回表。3番手の岩崎優が二死二塁からサンタナに均衡を破られる適時打を浴び、一度は「負け」を覚悟せざるを得ない展開だったが、踏ん張った。直後の8回裏、一死からマルテが燕のセットアッパー・清水から右翼ポール直撃の一撃を放ち、ビデオ判定の末に13号同点弾。そのまま9回を戦い切り、矢野燿大監督(52)も「負けなくてよかった」と今季3度目のドロー決着を前向きに振り返った。

 この日、全打点を叩き出した助っ人の働きもあり、巨人とのゲームを0・5広げる3ゲーム差に。試合後は指揮官ら首脳陣、選手全員がいつものように一塁線上に横一列に整列。主将の大山の合図に一塁側、グラウンド方向へと向き直り、深々と3秒間、頭を下げて1万2646人の虎党へ感謝の意を示した。

 甲子園での試合では勝敗に関わらず必ず行っているルーティン。今に始まったことではないが、今季からこの作法がより厳格化されている。コロナ禍にあっても、試合を開催させてもらえることへの感謝や、制約の多い環境で「阪神の試合が見たい」と球場にかけつけてくれたファンへの謝意をより明確に示そうという指揮官の発案で「お辞儀も全員で息を合わせて、しっかりと3秒間」とゲームセットの後も息の合った姿を披露している。

 この一糸乱れぬ光景こそ、今年の阪神の強さの象徴とみられている。猛虎の視察に訪れたセの編成担当は「要は『全員が同じ方向を向いて野球をやれているか』ということ。口で言うのは簡単だけど本当にどうか、というところはこういうところに出るから」として、こう続ける。

「(同一カード3連敗した)27日のDeNA戦は特に注目して見ていた。外から見て、すぐに分かるのはこういう部分。実際にこういったこと(試合後の観衆へのあいさつ)は他もやっているけど、阪神が一番しっかりしている。逆を言えばこれがバラバラな感じになったら、こちらとしては『何かあったな』ってなる。グラウンド以外の目の届かないところで起きたことも含めてね。実際、今下位のチームで、勝ち試合でコレをやってもバラバラなチームもあるし」

 首位を守る虎の安定感は、こうした勝ち負けに一喜一憂しない姿勢にも表れている。