〝実りの春〟となるか。阪神は9日に矢野燿大監督(52)をはじめとした一、二軍首脳陣が一堂に会し、来月1日からの春季キャンプに向けたスタッフミーティングを行った。

 指揮官は「第1クールからシート打撃とか練習試合も早めにある。実戦はやれる中で、早めに多めにやっていきたい」と意気込んでおり、一軍はキャンプ期間中に対外試合9試合を予定するなど実戦を重視したスケジュールになる。

 特守や特打など個別メニューではなく、チーム単位の鍛錬に費やす時間が増えそうな今年のキャンプで〝旗振り役〟となるのが臨時コーチを務める川相昌弘氏(56)だ。世界記録の通算533犠打のバント技術はもちろん、遊撃手でゴールデングラブ6度受賞を誇る守備力の伝授にも期待が高まっている。

 昨季まで2年連続で12球団ワーストの失策数を記録した阪神だが、今キャンプでは「目に見えない失策の撲滅」にも力が注がれるという。チーム事情に詳しい関係者が明かす。

「矢野監督が課題に挙げている『球際の強さ』というのは、個人個人が打球に追いつけるか否かというような単純な次元ではない。チームとしての球際への意識。優勝した巨人なんかと比べて、かなり内外野の連携ミスや悪送球でいらない点や余計な進塁を敵に与えたという反省が大いにある。そこをゲームに近い練習を増やして改善し、レベルを上げていきたい」

 ひと言で言えば内外野の連携強化だが、その重要性を誰よりも知るのが川相氏だ。背景には現役時代に失敗を通じて得たものがある。

 巨人の遊撃手として出場した1987年の西武との日本シリーズでのことだ。中堅手クロマティの緩慢な守備の隙をつかれ、中前への単打で一塁走者の辻が本塁生還を果たしたシーンは今も「伝説の走塁」として今も語り継がれているが、その際に中堅から返球を受けたのが川相氏だった。当時何かと矢面に立たされたのはクロマティだが、後に川相氏は自分のミスでもあったと自戒している。その反省があったからこそ、89年以降の6度のゴールデングラブ賞受賞につながったのは言うまでもない。

 個でできることには限界がある。チーム単位で〝緩さ〟を排除できれば2005年から遠ざかっているリーグVもグッと近づいてくるはずだ。