阪神のリーグ優勝目前に発覚した村上ファンド問題 星野SD「天罰下るわ」

2020年06月06日 11時00分

SDとして岡田監督を後方支援した星野氏(左)

【球界平成裏面史(42)、岡田阪神(3)】記者として本当に情けない思いをした。目の前で一大事が起こっているのに、どう対処していいのかが分からない。阪神のリーグ優勝の直前、平成17年(2005年)9月27日に発覚した「村上ファンド問題」だ。スポーツ紙の虎番記者だから、経済マターは知りません。それでは通用しない事態に焦りまくった。

 打った、投げたに関しては臨場感たっぷりに原稿を仕上げる自信はあった。ただ、株の買い占めだの敵対的買収、TOB、ホワイトナイトなんてチンプンカンプンだった。だが、それを理解しないと仕事にならない。

 要は村上ファンドという大金持ちの会社が、我らがタイガースに手を出そうとしている。その気なら、こっちも真剣にいく。そんな気持ちで一気に勉強不足を取り戻し、取材に取り組んだ。

 学生時代の友人で金融関係に就職した人間に片っ端から連絡した。阪神担当の記者として、今の自分が知っておくべき知識を叩き込んでもらった。

 村上世彰氏が率いた投資ファンドが阪神電鉄株の26%あまりを取得し筆頭株主に。その後も電鉄株を買い増し40%近くまで取得した。電鉄の子会社である阪神球団に影響が出かねない事態であることは容易に想像できた。

 この状況で誰に何を質問し、どんな記事を世間に発信するのか。本社の偉い人たちは一様にノーコメント。そりゃ、そうだろう。そんな中、印象に残っているのは、当時の星野仙一SDの言葉だ。

「憤りを感じるわな。タイガースは公共のものや。私的なもんじゃない。天罰が下るわ」

 常々、「マスコミのみんな、担当記者も戦力や」と公言し世論を味方にすることが得意だった星野SD。その口から発せられた言葉が新聞に載ると、虎党の世論も「村上何してくれてんねん」という空気になった。

 結果的に阪急からの株式公開買い付け(TOB)に村上サイドが応じ、阪神本社が乗っ取られることも、タイガースが私物化されることもなかった。

 騒動の当時、本社専務で06年から球団オーナーとなり、星野SDとも懇意だった宮崎恒彰氏の存在も印象的だった。地元の神戸大卒で自動車部出身。トランペットもたしなむという型破りなタイプで、勝手に親近感を持っていた。

 阪神グループは旧ブルーノート、現在のビルボードライブを運営している。タイガースとは全くイメージが違うおしゃれなライブハウスなのだが、宮崎元オーナーはこの事業に思い入れを持っていた。大事なことは何も教えてくれなかったが、個別取材の機会に恵まれると音楽と車の話で盛り上がってしまった。

 大企業の役員という肩書を持ちながら、さばけた印象のある宮崎元オーナー。前出の星野SDしかり、人間力にあふれている。「村上ファンド問題」の解決のカギとなった人物として、この2人は外せないと今でも筆者は確信している。

(楊枝秀基)

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