東京五輪が延期なら球界はどうなるのか――。日本野球機構(NPB)は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、23日に都内で12球団臨時代表者会議を開き、4月24日の開幕を目指すことで一致。斉藤惇コミッショナー(80)は「現時点で五輪の延期は考慮していない」と発言したが、各球団は東京五輪延期を見越したシナリオを検討。開幕がさらに遅れる可能性を視野に入れた日程再調整に着手している。

 代表者会議に先駆けて開かれた「第4回新型コロナウイルス対策連絡会議」では、専門家チームから厳しい見解が示された。座長の東北医科薬科大学・賀来満夫特任教授は「大規模イベントの早期開催は難しい状況。できる限り遅らせていただきたい。個人的には4月後半にやっていただきたい」と要望。これを受けて12球団が協議した結果、「4月24日開幕」の新方針が固まった。

 併せて、20日から行われていた練習試合の休止も決定した。セ・リーグは残り1カードを実施後、4月14日に再開を予定。パ・リーグは24日の試合から打ち切り、4月10日に再開するとした。斉藤コミッショナーは、この日に示した“24日開幕プラン”について「現時点では五輪の延期は考慮していません。CS、今後の日程については、これから検討する」とした。

 もっとも、東京五輪に関しては国際オリンピック委員会(IOC)が延期の議論を開始するなど状況は刻々と変化しており、球界としても無視できない。この日の代表者会議に出席したセ球団の関係者によれば、NPBが開幕日程のさらなる後ろ倒しをすんなり受け入れたのは、五輪延期の可能性が高まったことが背景にあるという。

「われわれとしては143試合というラインは守りたい。4月24日開幕となると正直ギリギリだが、五輪が1~2年延期ということになるならば、当初の中断期間(7月21日~8月13日)に公式戦を組み込める。5月までずれ込むことになっても、CS短縮などで乗り切れるんじゃないか。五輪の方向性が決まり次第、空けていた球場の確保に動くことになるだろう」と声を潜めて明かした。

 宙に浮いた立場の選手たちも、この日のNPBの方針について「ひとまず目標ができたことはありがたい」と、おおむね好意的に受け止めている。その上でセ球団の主力選手は「日程はきつくなるかもしれませんが、僕らとすれば試合数が減ってカネに響くのが一番困る。五輪が延期になるなら、中断せずに試合をやりましょう」と話した。

 とはいえ、新型コロナウイルスの感染拡大は現在も続いており、1か月後さらに事態が悪化している可能性も想定される。世界的にスポーツイベント自粛の動きが広がる中、五輪が延期になった場合に「プロ野球はOK」という判断を下せるかは微妙なところ。五輪が「年内延期」となれば、日程を巡るさらなる大混乱は避けられない。

 NPBは専門家チームから示された観客数の制限や海外渡航者、高齢者の入場自粛などの感染予防対策を各球団に要請した。そうした対策をすべて講じたところで4月24日開幕にこぎつけられるかどうか…。「(球場観戦を)自制していただきたいとは言えないが、命の問題。各球団で声をかけていただきたい」。斉藤コミッショナーの言葉にも迷いが浮かぶ。

 プロ野球のない日々が続くのはつらい。ファンには五輪以上に球春到来を待ちわびている人もいるだろう。もちろん、命は大事だ。どの道を進むのが正しいのか。球界の暗中模索は続く。