“ファーム塩漬け危機”から抜け出せるか――。新型コロナウイルスの影響で開幕が延期となり、各球団がもどかしさを抱えながら調整を進めているなか、巨人で「最もヤバい立場」とささやかれていたのが陽岱鋼外野手(33)だ。打撃不振でキャンプから取り組んだ一塁争いではベテランの中島に完敗。ヤングGにまで出し抜かれ、二軍暮らしが続いている。

 開幕延期により、出遅れ組がにわかに注目を集めている。左ヒジを負傷していたメルセデスが17日の三軍戦(ジャイアンツ球場)で実戦復帰。3回無失点の好投を視察した原監督は「テンポとか制球力も含めて、やっぱりいいものを持っていますね。あと1回、2回の登板でどれだけ階段を上れるかでしょうね」と一定の評価を口にした。

 こうした後発組はまだまだ埋もれている。その最たる存在が陽岱鋼だ。先のキャンプから「チャンスを広げるため」と一塁に挑戦。不慣れなポジションも無難にこなしたが、肝心の打棒が上がらず好調の中島に大きく水をあけられた。そもそも首脳陣の外野レギュラー構想は中堅が丸、右翼が新助っ人パーラで確定。残る左翼を亀井を筆頭に石川、支配下登録を勝ち取ったモタらと争う状況にあった。

 その中で陽岱鋼のムラっ気の強い打撃には、指揮官も全幅の信頼を置けず。一塁への大胆コンバートは“最後通告”の見方も強く「これで結果を出せなければ、いよいよ危ない」(チームスタッフ)ともっぱらだった。

 オープン戦は4試合で10打席無安打と快音が響かず、沖縄キャンプ打ち上げ後の2月末に二軍落ち。代わって一塁候補の一人である3年目の北村が一軍に昇格したわけだが、実はこの入れ替えにも厳しい現実が隠されていた。二軍首脳陣によれば「北村の昇格は、阿部(二軍)監督の推薦によるものではなく、上(一軍の首脳陣)が『北村を見たい』ということだった」という。この段階で陽岱鋼は完全に見切られた格好で、二軍でも「もう彼の実力はみんな分かっているわけだから、二軍でもダメなら三軍に送られるかもね」とまで言われる始末だった。

 いよいよ崖っ縁の陽岱鋼は17日に二軍でロッテとの練習試合(戸田)に途中出場し、5点リードの9回にダメ押しの3ランを放った。チーム内の競争はまだ続く。元木ヘッドコーチはG球場でファームでくすぶるナインに向け、開幕延期により「チャンスは増える」とハッパをかけた。

 開幕の延期で、ひとまず“命拾い”した格好の陽岱鋼。この一発を機に再浮上となるか。