今年で不惑を迎える阪神・藤川球児投手(39)が本紙のインタビューに応じ、虎19年目のシーズンに向けた意気込みを口にした。昨季は守護神返り咲きを果たし、チームのAクラス入り&CSファイナル進出に貢献。そんな火の玉右腕は今オフ、同世代で西武への復帰が決まった松坂大輔投手(39)への思いを激白。さらにあと「7」に迫った250セーブや若手選手への金言、矢野監督への思いなど、胸中を大いに語った。

 ――「恩返し」と言っている250セーブも達成間近(現在NPBで241セーブ、MLBで2セーブ)だ

 藤川:その日は通り過ぎるように来ると思っている。でも、そのときにスルーすることはできない。その記録を大事にされている方、そこを目指していた方、それを作った方に失礼になる。応援してくれている人にも失礼になるので恩返しの気持ちは当然ある。

 ――契約更改では「進退」という言葉も使っていたが、今後縦じま以外着ることはない?

 藤川:それはないかな。僕は他のチームのユニホームを着たから分かっている部分はある。だから(一筋でやってきた)鳥谷や能見さんには大きなリスペクトがあるし、桧山さんに対してもそう。自分たちにはできなかった我慢もたくさんしたと思う、生え抜きなだけに。だけど自分はアスリートとして純粋に生きたかったから、そっち(移籍)を選択してきた。だから(他球団移籍を希望した)鳥谷の「他でやりたい」という気持ちも分かる。裸一貫になってやりたいというのは誰でも思うことだと思うよ。

 ――優勝に向けては若手選手の成長も必要になる

 藤川:育成強化は今すごくうまくいっていると思う。ただ、選手の自覚というのは、持っている選手と持っていない選手の差が著しく激しい。やっぱり最初の何年間かうまくいっていない選手のほうが間違いなく意識が高い。大人として成熟していっての人間的な成長が必要。僕が入ったときは野村(克也)さんが監督だったから、人間的成長なくして一流になれないと教育された。そういう部分では研修期間というのは必要かなと思う。

 ――人気チームの弊害もある

 藤川:阪神タイガースに人気があるんであって、選手の人気があるわけではない。それをはき違えている選手がいる。そこに気づけるかどうか。プレーヤーとしての成長の妨げになる。阪神の特に生え抜きの周りにはチヤホヤしてくれる人がたくさんいる。ただ、金本さんがFAで来られたときに僕らが言われたのは「飯くらい自分で食え」ということ。人付き合いを考えなさいと。よそのチームの選手はそんなことない。その間に練習して、どうやったら自分がうまくなれるのかを考えている。

 ――そんな若手のなかでもチームを背負える選手は?

 藤川:高山じゃないですか、能力も含めて。このチームは高山がよくなれば強くなる。高山がダメならばあと何年間かはしんどいかもしれない。性格やプロフェッショナルな気持ちも含めて本物。このチームの命運は高山だと思う。そういうつもりで僕も接している。

 ――西武に復帰した松坂投手は、やはり特別な存在か

 藤川:一球団でずっとやっている人って今は少ない。石川さん(ヤクルト)、能見さんくらいかな。根気のある人たちだね。僕や和田(ソフトバンク)なんかは、飽き性だからね(笑い)。皆さんが知らない“空白の何年間”ってのが同級生にはみんなある。僕や和田と同様に、松坂も形式上は西武に“戻ってきた”。でも、本人の感覚は違うだろうね。どのチームであろうと勝負をしに西武にきただけだと思う。

 ――松坂のことはライバルとして意識しているのか

 藤川:僕はライバルっていないんですよね、もともと。関係ないと思っている。(松坂世代という)くくり方をしたことがない。生まれた日だって違うし、野球を始めた日も肘を手術した日も違う。でも、気持ちの張りにはなる。松坂が現役を続けていてくれることはうれしい。そんな気持ちにはなってきたかな。「彼が続けるから俺も続けよう」ってのはないけど「彼が辞めたから俺も辞めなきゃ」ってのはあるかもしれない(笑い)。深い意味はないけど。「あいつより長くやろう」という気持ちはない。もともと「長く現役を続ける」というこだわりはない。「一つずつを処理しながら一歩一歩」ということならいいけどね。

 ――矢野監督を日本一にしたいと言っている

 藤川:腹が据わってるよ。皆さんに与える影響や、優しさの裏で勝負をする心を強く持たれている。人を掌握するのもうまい。ドライな起用もするけど反発も起きない。「みんな従うぞ」ってね。狙ってではなく自然とそういう雰囲気になっているのがすごい。起用の思い切りの良さとブレのなさ。悩んだ時のカードの切り方も。俺たちは監督の子供。父親をよく見ています。メディアともこれだけいい関係をつくれている。メディアに何書かれても怒らないでしょ?「俺とお前はいい関係だと思っていたのに、何てこと書くんだ」とか言わない。それは勝負師としての覚悟。日本一になるべき監督だと思っていますよ。