広島の夏本番はこれからだ。1日の巨人戦(東京ドーム)に8―2で連勝。直接対決に勝ち越して4差に迫り、V戦線に踏みとどまった。勝負の分岐点は1―1の7回無死一、二塁。代打・磯村を送った場面で、緒方孝市監督(50)が仕掛けたバスターエンドランが見事成功。勝ち越し点をもぎ取って流れをつかむと、終盤まで猛攻を浴びせて突き放した。

 敵将・原監督のお株を奪う“ベンチ主導野球”で会心の勝利。指揮官は「作戦(のことは)はいい。しっかり切り替わったサインの中で、選手が動いてやってくれた」と磯村らナインをたたえると、連勝に浮かれることなく「一試合、一試合は変わりなく、次の試合に向かって準備していく」とチームを引き締めた。

 敗れていれば首位巨人とは6差に拡大していた一戦。残り試合数を考慮すれば、限りなく終戦に近づいていた。3連覇王者が敵地で意地を見せた格好だが、赤ヘルナインにはこんな“終われない理由”もあった。

「巨人戦にチョーさん(長野)がいないのは、お客さんだけじゃなく、僕らもやっぱり寂しいですよ。すごい思いでカープに来てくれたんですし、勝負どころで巨人相手にあの人が輝くところを見たいじゃないですか」。今回の3連戦前、主軸の一人が熱っぽく口にしたのは長野の名前だった。

 丸の人的補償により広島入りした長野だが、先月3日に登録抹消となって以来、今も二軍調整が続いている。その間にチームは11連敗を経験するなどV戦線から脱落しかけた。球宴明けから勢いを取り戻したが、状況はいまだ崖っ縁。前出の選手は「一軍に上がる上がらないは本人の状態や首脳陣の判断。僕らがどうこう言うことじゃない。でも戻ってくる前に終わるわけにはいかないでしょう」と燃えていた。

 土俵際の直接対決を制し、どうにか望みはつないだ。次回巨人戦は地元で今月12日から。マツダスタジアムに背番号5の姿はあるか。