今でも変わらぬ思い DeNA・大和「甲子園ファンは12球団一」

2019年04月11日 16時30分

試合前に古巣ナインらと談笑する大和(右から2人目)

【楊枝秀基のワッショイ!!スポーツ見聞録】DeNA・大和内野手(31)が、開幕からの全11試合にフル出場。9日からの阪神3連戦(甲子園)では、かつての虎戦士として虎党の前でも存在感を示している。

 古巣との対戦といっても「やることをやるだけです」と淡々と振り返るなど、心がざわつくわけでもない。ただ、大和が甲子園でのプレーを特別だと思い続けていることは、虎党にも知っておいてもらいたい。

 自らの意志でタテジマのユニホームを脱ぎ、他チームへの移籍の道を選んだ。昨季、初めて甲子園を訪れたときには、虎党からの罵声を浴びることも覚悟していた。だが、大和は言う。「横浜に移籍してからでも、甲子園のファンに嫌な思いをさせられたことは一度もないです」。虎党の人情の深さを心の底から感じている。

 身内と思うからこそ手厳しく当たってしまうのが虎党というもの。その分、活躍したときの天地をひっくり返したような喝采は格別だ。「(勝負どころで)打ったときのあの地響きのような声援は本当にすごいですよ。今までどれだけ助けられたかわからないくらいです」と、大和の口からは感謝の言葉ばかりがこぼれてきた。

 2014年に阪神からDeNAにFA移籍した久保康友(現在メキシカンリーグでプレー)も、同様の経験をしている。同シーズンの甲子園遠征時に声をかけると「人気球団の阪神を出て、同一リーグ内で移籍するのは正直、勇気が要りましたよ。甲子園で投げるときにはブーイングされるのかなって思いましたもんね。でも、その逆です。『横浜でも頑張れよ』とか『帰ってきてくれ~』という声がほとんどでした」との証言。トレードなどチームの都合での移籍ならまだしも、FA選手にまで温かいのは異例と言っていい。

 08年に新井貴浩氏(現野球評論家)が広島から阪神にFA移籍した際には、旧広島市民球場で鯉党からかなりのヤジを飛ばされていたのを目撃したことがある。ネットに張り付いて、練習中の新井氏に執拗に罵声を浴びせた悪質な観客が球場職員に取り押さえられた現場にも遭遇したほどだ。

 9日に古巣西武から本塁打を放ってヒーローになった楽天・浅村も、西武ファンとおぼしき観客から「お前はそれでええんか」と心ない言葉を受けていた。

 入場料を支払って観戦するからには、プロらしからぬプレーにはブーイングがあっても仕方はない。いわれのない誹謗中傷はもっての外だが、ある種の厳しさがあるのは当然であり、愛あるヤジなら選手も望むところだろう。

 望んで移籍したDeNAで全身全霊を込めてプレーすることが仕事。その部分で大和がブレることはない。それでも虎を離れたからこそ分かることもあるという。

「本当に恵まれているなと思いますよ。甲子園での阪神ファンの声援は12球団で一番と言ってもいいと思います」

 敵からのこの言葉、阪神ナインにもそう聞こえているのだろうか。

 ☆ようじ・ひでき 1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。