中日のドラフト1位・根尾昂内野手(18=大阪桐蔭)は最小限の荷物を持参して名古屋市内の合宿所に入寮。読書家としても知られるスーパールーキーが厳選した2冊に驚きの声が上がった。

 合宿所「昇竜館」にはテレビとスチールのカメラ計25台、報道陣は約70人が集結した。

「早く慣れて自分のペースで生活できるようになりたい。しっかりやれることをやって、しっかり鍛えたい」と気を引き締めた根尾は他の新人選手に比べて極端に荷物が少なく、目立ったのはバランスボールと空気清浄機ぐらい。テレビも「見ないので。今後も買うつもりはないです」。野球や体力づくりに必要がないと判断した物は持ち込まなかった。

 そんな中で、読書家としても知られる根尾の机の上に並んだ本は「野球協約」と「野球規則」の2冊のみ。特に「野球協約」は“球界の憲法”とも称され、読破するのは難解なシロモノだが「一応、野球選手なので野球のことは知っておかないと」と涼しい顔で話す。

 これには周囲も驚きを隠せなかった。ドラフト2位の梅津晃大投手(22=東洋大)は根尾のあまりのストイックさに「怖いっすね」と言い「(この2冊は)持ってはいるので、これから送ってもらいます。自分も読もうと思う」と頭をかいた。

 元監督でもある落合博満氏の「采配」や野村克也氏の「野村ノート」、古田敦也氏の「フルタの方程式」、元サッカー日本代表キャプテン・長谷部誠の「心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習慣」を机の上に並べた同4位の石橋康太捕手(18=関東第一)は「野球協約? そういう堅苦しいのはちょっと…。でも、そういうのもこれからはしっかりと読まないといけない。見習います」と尊敬のまなざしを送った。昨年のドラ1で根尾が入寮した301号室の元住人だった鈴木博(すでに退寮)は「野球規則? 何ですか、それ!? 見たことないです。すごいですね。ぜひ根尾君には結果を残して出世部屋にしてほしいですね。そうでないと僕のせいになってしまう」と頭を抱えたほどだ。

 野球協約を精読していた選手といえば、前出の落合氏が有名だ。現役時代には1991年に年俸調停、93年にはフリーエージェント(FA)制度で、いずれも日本選手第1号となった。監督時代は2007年に“浪人”の危機だった中村紀洋をテスト生を経て育成枠で獲得。リーグ優勝を果たした10年は一軍全選手を出場選手登録から抹消してポストシーズンに備える“オレ流奇策”を敢行し、のちにこのルールは明文化されたほど。あるスカウトは「高校生がプロ入り前に野球協約を読み込んで入団したり、それを寮に持ち込むなんて聞いたことがない。根尾も3度の3冠王を達成した落合さんのような活躍をしてくれると思う」と期待を寄せた。