レッズのデービッド・ベル監督 生粋の野球一家で養われた采配力と抜群の人間性

2020年06月20日 16時30分

【メジャー回顧録(4)】派手な実績はなくとも抜群の人間性で名将になる可能性は高いのではないか。個人的にそう感じているのが、昨年から米大リーグのレッズを率いているデービッド・ベル監督(47)である。

 現役時代は内野手として実働12年で計6球団に在籍。通算1239安打をマークした。だが、レッズの球団殿堂入りを果たした祖父ガス・ベル氏やゴールドグラブ賞に6度輝いた父バディー・ベル氏に比べると実績は遠く及ばない。日本の野球ファンであればイチロー氏が2001年にアスレチックス戦で魅せた伝説の「レーザービーム送球」を捕球した同僚三塁手として認知されるぐらいだろう。

 それでも取材を通して見た現役時代のベルの人柄は今も忘れられない。中でも印象に残っているのは01年、イチロー氏の取材で奔走していた時期にベルがかけてくれた言葉である。

 当時、イチロー氏への取材は日本から報道陣が大挙していたこともあり代表取材が通例。大半の記者はイチロー氏が活躍しても本人から直接話を聞くことが難しく、必然的に周囲の同僚選手にコメントを求めることが日常化していた。そんなシーズン序盤のある日、ベルにイチロー氏に関しての話を聞こうと取材に伺うと、本人は快く応対。その上でこう付け加えてくれた。

「キミたちはすごいな。米国に来てすぐに活躍するイチローもすごいが、キミたちも毎日彼と直接話すことができないのに熱心に取材を試みてくる。僕は何げなくその様子を見ていたけれど、見習うべきところがある。僕でよければいつでも取材に来てくれて構わない。時間がある限り答えるよ」

 この会話以来「困った時のベル」として何度助けられたことか。イチロー氏の印象、そして破竹の勢いで連勝街道を突き進んでいたマリナーズのこと。本人の言葉どおり、すべて嫌な顔一つせず丁寧に答えてくれた。あの低姿勢と誰とでも隔たりなく接する懐の深さ。今思えば若くしてレッズの指揮官に抜てきされたのもうなずける。

 監督就任1年目の昨季は地区4位と結果を残せなかったが、チームはオフに大型補強を敢行。昨季14勝を挙げた左腕マイリー(元アストロズ)や昨季ブルワーズで35本塁打の強打者ムスタカスらが加入し、秋山翔吾(32=元西武)の獲得にも成功した。

 チーム内には個性豊かな面々が揃うが、生粋の野球一家で養われた采配力と周囲を引きつける求心力を持つベル監督であればチームをうまくまとめあげるはず。シーズン開幕後はその手腕に期待したい。