アイルランドやスコットランドの伝承、ケルトの神話や民話には「水馬」と言われる幻獣がいくつか登場する。名前が表す通り「水辺にすむ馬の特徴を持った幻獣」である。
容姿は馬そのものであったり、下半身が水棲に適したウミヘビのような形態になっているものもある。ペガサスやユニコーンほど有名ではないが、やはりヨーロッパでは馬という生物が身近な存在だったことを感じさせる。
中でも「ケルピー」は有名な方ではないだろうか。ケルピーは黒か灰色か栗毛色の馬で、美しい姿で人間を引きつけて、人間を背中に乗せると川に潜り溺死させ、その死体を食うと言われている。
姿を変えることが得意で、人間の気を引くためにさまざまな人間の姿になれるようだ。ただし、タテガミや髪の毛に水草を絡ませているために正体がバレやすいらしい。
「アハ・イシュケ」はスコットランドのハイランド地方の海や塩水湖にすみ、ケルピーと同じように人間を背中に乗せて入水し、やはり食べてしまう。アハ・イシュケがケルピーよりもタチが悪いのは、背中が粘着性になっていてまたがった人間が逃げられないようになっている点である。
他にも「ナッグル」「シューピルティー」「タンギ」「カーヴァル・ウシュタ」など水棲型の幻獣は地方によって存在するようだ。
「プーカ」もそんな水馬の一種で、アイルランドの南端に近いアビスデリー湖近辺に伝わる妖精だ。黒い馬の姿をしているとか四肢は水かきになっているなどと身体的特徴に関してはあやふやだが、やはり変身能力があって若い牡馬の姿で人間に近づくことが多い。
このプーカはワシや黒ヤギ、牡牛にも姿を変えることが可能だが、耳の形だけは馬のままだそうだ。人の姿になっても耳が馬であれば気づきやすいだろう。
農家の柵が壊されたり、家畜を殺したり、旅人を連れ去ったり、悪さの象徴のように言われる一方で、穀物をひいて粉にしてくれるなど善行の逸話も残っている。
アビスデリー湖では1800年代から1900年代初頭にかけて、大蛇のような大きな謎の生き物が目撃された。しかし、アイルランドにはヘビが生息していないため、この生物の正体はプーカだったのではないかと噂されている。
アイルランドの湖では巨大UMA「ウマウナギ」の目撃談も多く、プーカの実在についてはいまだに解明できていない。












