オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第242回は「げたおじさん」だ。

 北海道・函館市の五稜郭駅の北側にあるトンネルに出るとされる妖怪である。地元では通称“お化けトンネル”と呼ばれ、車でここを通ると現れるそうだ。

 片手にげたを持って車を追いかけ、車に投げつけるという。げたが当たってしまった場合、悲惨な交通事故で命を落としてしまうと言われている。

 余談として、トンネルの壁面には「けたに注意」という看板があり、通行車両などに「桁(けた)下」の高さを注意喚起している。これがげたとして勘違いされたものと思われる。

 これは、和歌山県のトンネルに出る「あたご」と呼ばれる現代妖怪に近い。ただし、あたごは老人であり、げたおじさんは中高年である。しかも、あたごは自転車で追いかけてくるが、げたおじさんはげた履きで追いかけてくる。どちらかが基本ベースの妖怪であり、どちらかがスピンオフで進化したバージョンであろう。

 この妖怪が使うげたというアイテムが非常に興味深い。他にげたを使う妖怪として、戦後すぐに福岡県に出没した「カランコロンのお化け」が想起される。このカランコロンのお化けが、水木しげるのゲゲゲの鬼太郎の元ネタになったものと思われる。

 なお、履物をモチーフにした現代妖怪といえば、人間の靴に化ける「くつむし」という妖怪がいる。

 また、伝承妖怪で履物をモチーフにした妖怪といえば「化け草履」「蓑草鞋」などが思い出される。マニアックな伝承妖怪といえば、「化け古下駄」という存在がいる。これは頭部がげたの形状をしており、江戸期の妖怪かるたなどで確認されている。