オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第241回は「ただいまさま」だ。

 ある地方の小さな神社に祀られている神様である。これは名前通り「ただいま」と言ってくれる家族を増やしてくれる。

 子供がいない家庭に赤ちゃんを授けてくれたり、家族がいない家に家族を増やしてくれたりする。といっても、自然に家族が増えるわけがない。いきなり他人が自分の家に訪ねてきて突然、家族になるのだ。

「ただいまさま」が祀られている神社に願を掛けると、続々と他人が訪ねてきて、家族に加わるという。この呪いを解くには、願掛けした人の一番大切なものを持ち出して、神前にて破壊することだ。

 ところで、妖怪は反復するあいさつ言葉を使用できない。例えば、電話に出た時に「もしもし」というふうにあいさつするのだが、妖怪は「もし」としか言えない。つまり、「もしもし」という呼びかけは、魔物か人間か見分ける方法であったのだ。

 山中でも一声呼びは、魔物と間違われるので、必ず二声続けるようにしている。山言葉を使用するのも妖怪対策である。また樺太アイヌでは「おーい」と一声だけ呼びかけることがある。これも「人呼びお化け」の仕業だと言われている。

 他にも妖怪がしゃべることのできない言葉は多い。夜中に人と行き合った時に、「誰や」と問いかけると、人間だったら「おらや」と名乗るが、妖怪だったら「あらや」と言ってしまう。これはカワウソが化けた妖怪である。

 悲しいかな妖怪は、人間の言葉を満足にしゃべれない存在なのだ。