ノンフィクションライターの栗田シメイ氏が24日に「檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち」(講談社)を刊行した。2023年に東京都狛江市で住人の女性(当時90歳)が暴行を受け死亡し、高級腕時計が奪われた。首謀者は「ルフィ」と名乗り、フィリピンの収容所からSNS上で集めた闇バイトの実行役に指示していた。その残忍な犯行は日本中を震撼させた。栗田氏は幹部の一人・小島智信被告、〝伝説のかけ子〟山田李沙被告との面会を中心に関係各所を取材し事件の全貌に迫った。そこから浮かび上がった恐怖と絶望とは――。

 今年5月に発生した栃木県上三川町の強盗殺人事件で、闇バイトによって集められた高校生4人が逮捕された。バールや刃物を持って侵入し、住人女性と飼い犬を殺害。高校生らはいずれも16歳で犯行後すぐに逮捕、指示役とされる20代夫婦も逮捕された。高校生による残忍な犯行に加え、そのずさんさが、かえって闇の深さを感じさせた。

 闇バイトの存在を世に知らしめたのがルフィ広域強盗団だ。栗田氏は事件の全貌に迫るため山田被告と2年に及ぶやり取り、小島被告とも40回弱もの面会を行った。

 小島被告の印象について「合理性と論理的な思考を兼ね備えた人間を優秀なビジネスマンと定義するなら、その素養があります。社交的な一方で人のえり好みは激しかった」と述べた。

「ルフィ」を名乗る今村磨人被告、渡辺優樹被告ら幹部と行動を共にしていた2人との面会を通じてグループの内情も見えてきた。

「彼らも頭の回転が早く、人がどうやったら動くかを考えている。山田被告が公判で『かけ子たちは幹部らの洗脳状態にあった』と証言したように人心掌握術に長けている。恐怖だけでは人を動かすことはできません」
 
 闇バイトに応募した者は、捨て駒として悲惨な末路をたどる。なぜ応募者が途切れないのか。

 栗田氏が取材した元闇バイトのリクルーターは「興味のある情報以外は目に入らない人が応募してくる。自分に都合のいいことしか知ろうとしない。若者だけではなく中年の応募も少なくない。貧困層が増え、病める日本は替えが利く駒がいくらでいる」と話したという。 

 闇バイトを根絶することはできないのか。

 この問いに栗田氏は「闇バイトはなくなりません。ルフィ事件は模倣犯の多さという点で最悪な形で日本社会に暗い影を落としました」と絶望を口にする。

 その上で「闇バイトの最大の恐怖は被害者、加害の両方になる可能性があること。その源流とも言えるルフィグループの実態を把握することが家族や大切な人を守ることにつながることを願っています」と指摘した。