トランプ大統領は米東部時間1日のゴールデンタイムに19分間の演説を行い、「戦闘は、ごく近いうちに終わる」「今後2~3週間で、われわれは彼らを猛烈に攻撃するつもりだ」と米国民に約束し、数日内にイランを「石器時代へ送り返す」と表明した。イラン戦争は泥沼化しているが、イラン打倒に近づいていると国民を安心させるための演説だ。

 米イスラエル軍の攻撃によって、イランは前最高指導者や幹部数十人を失い、ミサイル攻撃を受けたが、高濃縮ウランは依然として地下トンネルに埋蔵されたまま。トランプ氏はイラン政権の体制転換を語った一方で、新最高指導者モジタバ師は前政権以上の強硬派とみられる。民衆蜂起は起きておらず、イラン政権は反体制派活動家の処刑を続けている。

 世界が注目したのは、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖がどうなるかだった。世界の原油の20パーセントが通過する重要な場所だ。

 トランプ氏は「米国はホルムズ海峡経由でほとんど石油を輸入していないし、今後も必要ない」「そのルートを使う国々が自ら安全を確保すべきだ」と言い、ホルムズ海峡は米国ではなく、欧州などにとって重要であり、ホルムズ海峡を通過する原油に依存する国々が対応すべきだとした。

 内容は、これまでトランプ氏が自身のSNSトゥルース・ソーシャルやメディアで発信してきたことだけで、新たな話はなかった。演説後、株価先物は急落し、原油価格は急騰した。

 一方、米イスラエル軍によって前最高指導者が殺害され、ミサイル攻撃で打撃を受けたイランが、かえって中東での影響力を強めることになったという見方もある。

 中東事情通は「イランによりホルムズ海峡は事実上封鎖状態で、イランは通航課金を検討しているほどです。米国はこれを戦後の賠償代わりとして認めるかもしれません。〝タコの腕〟と言われるイランの代理勢力のイラク民兵は米外交施設を攻撃、ヒズボラは開戦3日後に参戦、フーシ派も先日参戦しました。この状態で米国が撤退すれば、イランはホルムズ海峡の支配者となり、代理勢力と共に湾岸諸国を武力で脅し続けることで中東の支配的勢力となります」と指摘する。

 米国はイランに大打撃を与えた。地理的に離れている米国にとっては脅威でなくなった。しかし、現在の状態で米軍が撤退すれば、湾岸諸国にとっては「米国が本気で殴って生き残ったイラン」としてイランの格が上がり、中東で影響力を持つことになってしまうかもしれない。