雨さえ、主役の輪郭をぼかせなかった。ドジャースの大谷翔平投手(31)が3月31日(日本時間1日)、本拠地ドジャー・スタジアムでのガーディアンズ戦に「1番・投手兼DH」で先発し、6回1安打無失点のクオリティースタート(6回以上、自責点3以下)で今季初勝利。すると米球界のレジェンド、ペドロ・マルティネス氏(54)から思わぬ最上級の〝AI称賛〟が飛び出し、大きな反響を呼び起こしている。

 結果だけを見れば、先発投手として申し分ない滑り出しだった。この日の大谷はガーディアンズ戦で今季初めて投打同時出場し、投げては6回87球、1安打無失点、6奪三振、3四球1死球。打っても3打数1安打2四球で、4―1で勝利したチームの快勝劇に大きく貢献した。

 雨が降り注ぐ難しい条件でも3回まで無安打投球を続け、最速99・2マイル(約159・6キロ)を計測。今春のオープン戦登板を経て迎えた今季初の公式戦先発マウンドでも、いきなり大谷らしい支配力を示した。

 しかしながら試合後の本人は、手応えと課題を同時に口にした。「難しい天候の中でしっかりと6イニング、決まった球数の中で投げられたのはよかった」と振り返る一方で、序盤に四球を与えた場面などを念頭に「最初の方は力が入っていたなという感想はあるので、それが次回以降の少し課題かなと思います」とも語った。

 打者としても開幕5試合で本塁打ゼロと、まだ完全な上昇気流には乗り切っていない。自身も「甘い球を振りにいった時に一番自分が望んでいる結果にはなっていない」と感覚のズレを把握しているが、それでも6四球を選ぶなど出塁率は4割5分5厘と先頭打者として塁上をにぎわせる役割は果たせている。だからこそ、この日の内容は「完成」ではなく「予告編」と受け取るべきなのかもしれない。

 そのすごみをあらためて言語化したのが、かつてレッドソックスやフィリーズなどで通算219勝をマークし、米国とカナダ両国で野球殿堂入りを果たしたレジェンド右腕・マルティネス氏だ。米メディア「TNTスポーツ」の番組内で、過去3度のサイ・ヤング賞を誇る大投手は「翔平はAIによって作られたと思う」と笑いを交えて切り出し、「本当に、翔平は本当に素晴らしい。シーズン序盤で投げの感覚をつかみ、かなり強いチーム相手にあの多様な球種を効果的に使えるのは、どういうことだろう?」と疑問を呈しながら脱帽した。

 単なる賛辞ではない。球種の幅、球威、試合勘、さらに打者として同時出場している事実まで含めれば、常識的な物差しでは測れない――。そう言わんばかりの評価だった。米メディア「クラッチ・ポインツ」も、この発言を大きく拾った。同メディアは、大谷がすでにMLB史上屈指の才能を持つ選手と見なされながら、なお人々を驚かせ続けていると紹介。フルタイムで出場を重ねる打者がシーズン5試合目で投手として、これだけのインパクトを残す困難さをあらためて強調した上で、マルティネス氏の「AI発言」を半ば本気のように受け止めて大きく報じた。

 二刀流がドジャースで日常化すればするほど、周囲の感覚も当然のようにマヒしていく。その中で大谷が見せつけた「雨中の6回零封」は、その〝異常値〟をさらに跳ね上げた。打席とマウンドに立った瞬間に球場のみならず、MLB全体の空気をも変えてしまう――。この男だけは、やはり普通の規格では説明できない。