〝ジャンボ〟の意外な素顔とは――。男子ゴルフ界をけん引してきたレジェンドの「ジャンボ」こと尾崎将司さん(享年78)の「お別れの会」が16日に都内で行われた。多くの関係者が故人との別れを惜しむ中、日本ツアー通算94勝など数々の偉業を成し遂げてきたゴルファーを長年取材してきた担当記者が、スーパースターに〝密着〟した日々を振り返った。

【取材の裏側 現場ノート】豪快な人だった。目立ちたがり屋でもあり、時には繊細な面もあり、取材を通してかわいがってもいただいた。特に1990年代は圧倒的な強さを誇っており、当時のデスクから「優勝しなくても、ジャンボで原稿を書くんだぞ!」と厳命される日々だった。

 ジャンボと言えば〝ミスタープロ野球〟長嶋茂雄さんの熱烈な支持者。93年に巨人の監督に復帰すると「背番号33」に合わせ、ボールやキャディーバッグにまで33の数字を刻んだ。また盆栽好きで知られ、品評会で入賞したこともある。特にさつきに愛情を注ぎ、盆栽について聞くとゴルフよりも冗舌に語ってくれたのは印象深い。

 ラッキーカラーは紫で同色のウエアやアイテムを好んで身に着けた。某大会で優勝した際、紫色の特製アウターを「かっこいいですね」と持ち上げると、担当記者を集めて「くじで当たったやつにやる」と抽選会を実施。某紙記者が当選するも、過去にトラブルがあった社だったことから「お前のところはダメだ」とやり直し。他の記者がお宝をゲットした。

 すると、あきれ顔のジャンボは本紙記者の耳元で「2度もチャンスやったのに引きが弱い。勝負事は強運じゃないとダメなんだよ」と…。記者に〝あげたい〟と思ってくれたようだが、素直に渡してくれないのもジャンボ流。くじ引きなんかにしないで「普通にプレゼントしてくれれば良かったのに」とは思ったけど、あえて口には出さなかった。

 そんなジャンボは〝コブラポーズ〟が優勝時の定番パフォーマンスだった。2位以下の選手に大差をつけ、優勝を確実にして最終ホールに向かう時は、必ず中継局のテレビカメラ位置を確認。ウイニングパットを決めると、力強い定番ポーズでアピール。特に大きな大会で優勝時には両手を使った〝ダブルコブラ〟で自らの優勝を祝福した。

 ここに書き切れないほど数々の伝説がある中で、もっとも忘れられないのは95年「ダンロップフェニックス」最終日の最終ホールで、イーグルを決めて逆転優勝したときのこと。試合後、ジャンボを直撃すると、ポケットからボールマークに使うコインを4枚取り出し「オレのゲン担ぎ。〝KEEP・FOLLOWING YOUR DREAM〟という意味がある」とし「いつまでも夢を追い続けなさいってね。俺には世界で勝つという夢がある。それを実現するためのパワーが欲しかった」と説明してくれた。

 普段は2枚をポケットにしのばせているが、最終日は4枚。ダブルの効果を期待したそうだ。圧倒的な実力を誇るジャンボが、まさかのゲン担ぎという驚きとともに紙面の〝特ダネ〟になったのは言うまでもない。(1983年~2001年、ゴルフ担当・桑原 洋)

「ダンロップ」連覇を果たし、喜び爆発のジャンボ尾崎さん(1995年)
「ダンロップ」連覇を果たし、喜び爆発のジャンボ尾崎さん(1995年)