侍ジャパンが10日のWBC1次ラウンドC組最終戦でチェコを9―0で下し、4戦全勝で1位通過を決めた。だが、最後まで東京ドームで強い余韻を残したのは、敗れたチェコの先発右腕オンジェイ・サトリア投手(29=アローズ・オストラヴァ)だった。

 侍打線を4回2/3、6安打無失点に封じ、降板時には敵味方の拍手に包まれた。日本は8回に一挙9点を奪って突き放したが、そこまで試合を成立させたのは、ほかでもないこの〝電気技師右腕〟だ。

 米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」が伝えたのは、そんなサトリアの数字以上の物語だ。右腕はチェコで電気設備関連の仕事を続ける一方、代表では看板投手として奮闘。前回2023年大会の1次ラウンドでは東京ドームで大谷翔平(31=当時エンゼルス、現ドジャース)から3球三振を奪い、一躍〝日本で最も知られたチェコ選手〟になった。

試合後、笑顔で会見に登場したチェコ代表のサトリア(読売新聞社提供)
試合後、笑顔で会見に登場したチェコ代表のサトリア(読売新聞社提供)

 今大会でも6日のオーストラリア戦で3回2/3無失点、この日の日本戦でも無失点投球。代表ラストと決めて臨んだWBCを、8イニング無失点で締めくくった。

 本人は今後も地元クラブでプレーを続けるが、代表からは退く意向を明かしている。理由は幼い子供との時間、家族、そして近く起業予定のチェコでの仕事だ。派手なプロ契約でも、メジャー挑戦でもない。生活の基盤を守りながら国のユニホームだけは全力で背負う。その姿が、日本のファンにも強く刺さった。

 試合前には、大谷が先発から外れたことに「悲しい。ファンもそうだと思う」と漏らしつつ、最後は再び東京ドームの喝采を浴びた。チェコは4戦全敗で大会を去ったが、サトリアは〝野球観光客ではない〟という母国の誇りを、静かな零封で示してみせた。