デトロイトが「象徴」を連れ戻した。

 タイガースは10日(日本時間11日)、ジャスティン・バーランダー投手(42)と1年契約を締結したことを発表した。契約は1年1300万ドルで、支払いの一部が後年に繰り延べられる形だという。タイガースでMLBのキャリアをスタートさせ、今月20日に43歳の誕生日を迎える大投手の2017年以来となる〝帰還〟は、単なる戦力補強以上に同球団の「攻めの姿勢」を端的に示すサインになった。

 ファンを感動させたのは契約書ではない。バーランダーが復帰発表後にSNSを通じて放った「55秒の動画」だった。SNSのプロフィール画像をタイガースでメジャーデビューを飾った2005年当時の写真に切り替え、「Back where it all started.(すべてが始まった場所へ)」と短く添えて投稿。

 加えてインスタグラムとXで配信した映像にはタイガース時代の名場面を畳みかけ、BGMにはデトロイトを拠点に活動し、世界的人気を誇るエミネムの02年のヒット曲「Till I Collapse」を選んだ。米メディア「ラリー・ブラウン・スポーツ」も報じているように地元デトロイトの空気を知るスーパースターの選曲まで含め、そのバーランダーの姿勢は「復帰報告」という感傷的なムードよりも〝これから戦っていく〟という「宣戦布告」に近いと評せるかもしれない。

 もちろんタイガースにとって、バーランダーは「戦力」としての意味も重い。球団はすでにエース左腕スクバルを軸に、アストロズからFAとなっていたバルデスも獲得するなど屈強な先発陣を着々と構築。確かにバーランダーは全盛期の再現を求められる立場ではないにせよ、勝ち方を知るベテランがローテにいるだけで春先のクラブハウスの温度も変わる。バーランダー本人も昨季終盤に持ち直したと報じられ、復帰は「昔話」では終わらない。

 キャリアの象徴性も十分だ。11年にMVPとサイ・ヤング賞を同時受賞し、ワールドシリーズ制覇はアストロズで複数回経験。通算266勝で「300勝」という節目も視界にあるとされる。デトロイトが今オフに積み上げているのは、数字の補強だけではない。前出のラリー・ブラウン・スポーツも示すように「優勝の匂い」を持ち込む補強だ。だからこそSNSを通じてバーランダーから発信された「55秒の映像」が、デトロイトのファンのハートをとらえ涙させた――というのが、同メディアの見解である。

 タイガースは2年連続でポストシーズン進出中とはいえ、地区優勝からは2014年以来遠ざかったままだ。だから今季は、象徴を連れ戻して原点に立ち返り「攻めに行く」シーズンとなる。