論争必至だ。ドジャース・大谷翔平投手(31)の「史上最も複雑」とも称される巨額の後払い契約が、来オフ発生が懸念されるMLBロックアウトの火種として再び俎上(そじょう)に載せられようとしている。米専門メディア「ドジャースウェイ」が報じた〝税制上の抜け穴問題〟を「スポーティングニュース」なども後追い報道し、議論は一気に拡大。「大谷はスケープゴートにされるのか」と波紋が広がっている。

 いわば「身内」の指摘だけに、物議を醸すのも無理はなかった。ドジャース専門メディアの「ドジャースウェイ」が「大谷の契約上におけるウイークポイント」を指摘したことが、米国内で大きな波紋を呼んでいる。2年連続でチームをワールドシリーズ制覇へと導き、さらにナ・リーグMVPも移籍1年目に続いて受賞するなど、大谷は今季もドジャースでインパクトを残した。しかし、その裏側で同メディアは「大谷とドジャースの契約は来オフにロックアウトが発生すれば、そこで最大の争点の一つになる」と警鐘を鳴らしている。

 ネガティブな案件としてとらえられているのは、大谷がドジャースと結んだ「後払い契約」だ。10年総額7億ドル(約1015億円)のうち約97%の6億8000万ドル(約986億円)を2034年から43年まで毎年繰り延べる特殊契約で、現在も含む33年までは年俸200万ドル(約2億9000万円=※以上金額は合意当時)しか球団の支出が発生しない設計になっている。これによりドジャースは選手の年俸総額に課される「ぜいたく税」を回避し、他の戦力補強に資金を回しやすい一方、大谷にとっては巨額の収入を将来に受け取る形だ。

 加えて、この契約にはカリフォルニア州の高額所得税(13・3%)を回避できる〝税務上の抜け穴〟も存在することが明るみに出ている。契約満了後に他州へ移住すれば、繰り延べられた収入には州税が課されなくなる可能性があるからだ。これに対して同州議会が敏感に反応していることはすでに米各メディアでも報じられているものの、この問題は来オフのMLB労使交渉を見据える上でも再びクローズアップされている。

 現行の団体交渉協約(CBA)は26年末で失効予定。オーナー側はサラリーキャップ導入を推進し、選手会は従来通り強く反発するとみられ、1994年以来のロックアウト(ストライキ)が26年12月から極めて高い確率で起こるとの見方が強い。そんな緊張感が漂う中、「スポーティングニュース」も「そのタイミングで大谷がスケープゴートにされる可能性がある」「彼がドジャースと締結した後払い契約はMLBのリーグ均衡を壊す〝象徴〟として批判の矢面に立つことになるかもしれない」などと指摘した。

 実際、大谷の契約方式を「革命的」と絶賛する声がある半面、MLB球団のオーナー間には「ドジャースだけが得をする構造」「大谷の契約は悪例になる」との不満もいまだに渦巻く。ドジャースのアンドリュー・フリードマン球団編成本部長が編み出した契約手法が、他球団との差を一層広げてしまったためだ。

 前出の「スポーティングニュース」は「大谷の後払い契約だけが問題ではない。ドジャースは複数の大型契約で類似した〝延期方式〟を採用しており、他球団が追随できない状況を作った」とも指摘。その公平性を巡り、オーナー間でも議論が白熱するのは必至とみられている。

 もちろん大谷本人に「非」があるわけではない。延期契約はMLBでも事実上認められており、希望すればどの選手でも選択可能だ。事実、選手会も「選手の権利を守るため継続を支持する」と明言している。スーパースターであるがゆえに、大谷が皮肉ながらも制度改革の象徴にされかねない状況は差し迫る「ロックアウト危機」を前に現実味を帯びてきた。