阪神はソフトバンクとの「SMBC 日本シリーズ」第4戦(29日=甲子園)に2―3で敗れ、アレよアレよの3連敗。対戦成績は1勝3敗となり、とうとうシリーズ王手をかけられた。晩秋の寒空のように冷え込んだ虎打線は、シリーズ4戦合計6得点と依然低調なまま。ここまで来たらマグレでもええから誰か打っておくれ…。2年前に飛び出した伝説的アーチをもう一度――。

 真綿で首を締められるようなジリジリとした試合展開に、無力感とフラストレーションばかりが充満した。先発・大津を始めとしたソフトバンク投手陣の攻略に手こずった虎打線のスコアボードは、7回終了時点までゼロ行進。2回に山川のソロアーチで先制を許すと、主導権を握られたままの苦しい時間が続いた。

 8回にシリーズ4戦連続打点と孤軍奮闘する佐藤輝の適時打などで1点差まで詰め寄ったが、反撃はここまで。本拠地甲子園で2戦連続の1点差負けと、シーズン中に何度も見せてきた接戦での粘り強さは鳴りを潜めている。

 試合後の藤川球児監督(45)も「もう明日、まず1試合チャレンジするということですね。振り返っても一緒ですからね。3つ勝つということだけなんで。明日まずひとつ取りに行く。これしかない」と憔悴(しょうすい)した表情で語った。1―10の大敗を喫したシリーズ第2戦(26日、みずほペイペイ)から続く悪い流れはまだ断ち切れていない。

 球団関係者は「短期決戦なんやしマグレでも何でもいい。誰かに雰囲気を変える一発を打ってほしい」とグラウンドを見つめながら語り、こう続ける。「2年前のノイジーのように…」。

 2023年の日本シリーズ第7戦(11月5日、京セラ)。3勝3敗の五分で阪神はオリックスとの最終決戦に臨んだが、この日は相手先発は状態抜群の左腕・宮城。打ち崩すことは困難かと思われたが、4回一死一、二塁のチャンスをつくると、ここで打席に入ったシェルドン・ノイジー外野手が先制の3ランをマーク。この一撃で勢いに乗った虎は7―1の勝利をつかむことができた。

 内角低めへ鋭く沈み込む切れ味抜群のチェンジアップを、ヒジをたたみながら左翼ポール際へ運んだ超芸術的な打撃技術は「ノイジーには悪いけど、今でもアレは正直マグレとしか思えない(笑い)」と今も球団内では語り草だ。

 38年ぶりとなる日本一に直結した同本塁打は、「値千金」をはるかにしのぐ〝値1億金〟レベルの対価を球団にもたらした。日本一フィーバーに湧いた球団はグッズ収入などで「たっぷり商売させていただきました」とウハウハの収益。虎残留は厳しいとみられていたノイジーも、推定年俸1億6000万円のサラリーで、翌年の契約をめでたくゲットした。

 1本の快音、ささいなワンプレーが短期決戦の行方を左右したことは球史が何度も証明済み。9回二死の剣が峰からでも、何が起こるかはまだまだ分からない――。