【取材の裏側 現場ノート】陸上男子3000メートル障害の三浦龍司(23=SUBARU)は〝グレーゾーンの判定〟にも一切の言い訳をしなかった。
日本中が熱視線を送った9月の世界選手権(東京・国立競技場)。同15日の決勝ではラスト1周でメダル圏内に浮上した三浦に対し、地響きのような歓声が注がれた。「ラストスパートは限界だったが、歓声が突き動かしてくれる感覚だった」。日本勢初の快挙が現実味を帯びるも、最後に悲劇が待っていた。
ゴール直前でエドモンド・セレム(ケニア)と接触し、手をはたかれて失速した。セレムは銅メダルに輝いた一方、三浦は2大会連続の入賞となる8位を死守。日本陸連が妨害と抗議するも棄却され、規定に基づく上訴も認められなかった。
SNSではファンを中心に批判が殺到。殺伐としたコメントがあふれたものの、三浦は冷静だった。「ある程度いろんな種目に共通して、運はつきもの。この競技の難しさであったり、面白さが伝わったと思う」
水濠やハードルの攻略はもちろん、選手同士の駆け引きもポイントとなる種目。身長168センチの三浦は、海外勢と体格が大きく異なる中で接触する場面、よける場面を瞬時に判断。「格闘技のような」との声も上がる厳しい状況下で世界の猛者たちと戦ってきた。
ただバランスを崩す予兆はあった。関係者によると、右足首の痛みや大会前には体調不良に見舞われたという。日本代表OBは「接触はよくあること。それよりも万全ではなかったから最後のハードリングが浮いてしまった」と指摘。しかし明るい兆しはあったようで「万全な状態で見たかったけど、次こそは行けるだろうと思ったし、本人も自信になったのでは」と期待を寄せた。
100%のコンディションでスタートラインに立ち、パフォーマンスを完璧に発揮するのは至難の業。だが、三浦は確かな手応えを得た。「五輪、世界選手権で金メダルを取るところが一番。そこがゴールであり、最大の目標」
「あの経験があってさらに成長できた」。近い将来、金メダルを手にした三浦のコメントが頭に浮かんだのは、気のせいではないはずだ。
(運動部・中西崇太)












