勝ちはつかなかったが、語り継がれる奪三振ショーだった。ソフトバンクは6日のヤクルトとの交流戦(神宮)に延長10回の末、2―3のサヨナラ負け。先発のリバン・モイネロ投手(29)が8回3安打無失点、球団新記録の18奪三振の快投を披露した。試合は土壇場の9回に守護神・オスナが同点2ランを被弾。10回に松本裕が相手伏兵・武岡にサヨナラ弾を浴びて、チームは交流戦初黒星を喫した。
この日、神宮球場は風速5メートル前後の風が吹いていた。自然の力もうまく利用して、伝家の宝刀・カーブは威力増大。ピンポン球のように急激に曲がる魔球に相手打者は手玉に取られた。
最速154キロの直球、チェンジアップ、スライダーどれも一級品で相手のバットは空を切り続けた。18個目の見逃し三振以外はすべて空振り三振。打席に立った13人全員から三振を奪った。
日本記録の19奪三振まで残り1に迫りながら、9回のマウンドには上がらなかった。「いつか誰かがレコードは破ると思う。自分が記録をつくるうんぬんより健康でいい投球を続けるのが大事」と交代を受け入れた。
開幕から無傷の5勝を挙げ、防御率1・30。圧巻のパフォーマンスが続いているが、モイネロの先発転向を成功に導いた〝恩人〟にとっては想定内の活躍だろう。左腕は今春キャンプにキューバの個人コーチを招聘した。かつて社会人野球・シダックスでプレー経験のあるヘスス・ボスベニエルさん。「今後を含め、僕が今どういう環境で野球をしているのかを見てもらいたかったんだ」。その人は日本の「野球」を知る名伯楽。一昨年オフに母国で師事し、先発転向をスムーズに導いてくれた立役者だった。ファーストクラスの往復便を手配するあたりが、恩を忘れないモイネロらしかった。
ボスベニエルさんは帰国前こう言い残して日本を離れた。「日本の皆さんは、まだ彼の本領を見ていない。記録をつくったり、タイトルを総なめにしても私は驚かない」。この日は日本記録に迫った。先発2年目、序章にすぎないのかもしれない。












